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続編:第6章 恋の振動と収束判定


恋人同士になった二人の関係は、予想通り、悠真の人生に激しい非線形な変化をもたらした。

翌日。登校した悠真のロッカーには、一通のラブレターが入っていた。差出人は知らない名前だ。しかし、彼はそれを開くことなく、バッグにしまった。

休み時間、涼が悠真の肩を叩いた。

「おい、相原。噂になってるぞ。七瀬と付き合い始めたって本当か? あんな高嶺の花を、お前が落とすとはな。お前の中に、そんな**『恋愛ポテンシャルエネルギー』**があったとは知らなかったぜ」

悠真は頬をかいた。

「恋愛じゃなくて、**『解の収束』**だよ。初期条件が完璧に定義されたから、導かれた結果だ」

「はいはい、わーったよ、数式バカ」涼はニヤニヤしながら、咲良の席を見た。「でも、いいのか? さっき、うちのクラスの女子軍団が、七瀬に詰め寄ってたぞ。『相原くんのどこがいいの?』って」

悠真は思わず身を乗り出した。「何だと!? 彼女に不要なストレス(ノイズ)を与えるのは、僕の『公理系』に反する!」

悠真が席を立とうとした瞬間、咲良が悠真の机にやってきた。手に持っているのは、彼がバッグにしまったばかりのラブレターだ。

「悠真くん、これ」

「あ、それ……」

「開けてないんだね。偉い」咲良は笑った。「でも、彼らが気にしているのは、私が悠真くんのどこを好きなのか、という**『存在証明』なんだ。だから、ちょっとだけ、私たちの関係を『公開する』**必要がありそうだ」

咲良は、教室の中央に向かって歩き出した。悠真は慌てて彼女の服の裾を掴む。

「ちょ、七瀬さん! 何を始める気ですか!?」

咲良は振り向かず、**「私たちの関係の『安定性』を証明する、ただの『収束判定』**だよ」**と囁いた。



第7章 教室に響くフェルマーの最終定理


教室の中央に立った咲良は、周囲の視線を集めた。女子生徒たちが、いぶかしげに彼女を見つめている。

「みんな、私が相原悠真くんのどこを好きになったか、知りたいみたいだね」咲良は静かに言った。

「はっきり言って、悠真くんは派手でもないし、スポーツも得意じゃない。でもね」

彼女は悠真を振り返り、その目を見て微笑んだ。悠真の胸は、彼の人生で最も複雑な周期関数のように乱高下した。

「彼は、世界が**『不確実なカオス』に見える時でも、必ずそこに『確実な真理』があるはずだと信じて、その解を求め続ける孤独な探求者**なの」

そして、咲良はチョークを手に取り、黒板に大きく書き始めた。

\[x^n + y^n = z^n \\quad (n > 2)\]

「これは、フェルマーの最終定理。360年間、誰も解けなかった難問。これを証明できるのは、世界で選ばれたごく少数の天才だけ」

「でも、悠真くんは、私に対して、誰も証明できなかった**『彼の恋心』を、勇気を持って私に『定義』**してくれた。それは、世界中のどんな難問の証明よりも、価値のある真実だと私は思う」

咲良はチョークを置き、悠真の隣に戻ってきた。

「つまり、悠真くんは、私という変数に対して、『絶対的な唯一解』を導き出した。その『探求心と勇気』が、私が彼を好きな理由の完全な証明だ」

教室は、水を打ったように静まり返った。女子生徒たちは、誰も反論の言葉を見つけられなかった。数学的な論破は、最強の武器だった。

「ほらね、悠真くん」咲良は囁いた。「これで、私たちの関係の**『定義域』**は、誰にも侵されない、完璧な閉区間になったよ」

悠真は、頭の中がまだ数式でいっぱいだったが、口から出たのはただ一つの言葉だった。

「七瀬さん……いや、咲良。ありがとう」

彼が、初めて彼女を名前で呼んだ瞬間。それは、二人の恋の振動が収束し、安定したに到達した、何よりの証拠だった。続編:第8章 涼の干渉と観測者効果


二人が付き合い始めて初の週末。デートの場所は、咲良の提案で遊園地**『ファンタジー・ランド』**に決まった。

「遊園地ですか? 運動エネルギーと位置エネルギーの変換が体感できる、最適な場所ですね!」悠真は、デートなのに専門用語が出てしまう。

「そう、そして、絶叫マシンに乗った時の心拍数の非線形な増加もね」咲良は楽しそうに笑った。

当日。絶好のデート日和だ。悠真は生まれて初めて、ジーパンとTシャツではない、涼に選んでもらった清潔感のあるポロシャツを着てきた。

悠真と咲良が、園内に入ってすぐの噴水前で合流した瞬間、背後から声がした。

「よっ、デート中失礼!」

振り向くと、そこにはカジュアルな私服姿のが、派手なサングラスをかけて立っていた。

「涼!? なんでここにいるんだ!」悠真は驚きで声を上げた。

「たまたまだよ、たまたま。俺も今日、野球部のオフで暇だったから、**『運動の法則を体感しに』**一人で来たんだよ」涼は明らかに嘘だとわかる笑みを浮かべた。

悠真は額に青筋を立てた。 「君の存在は、僕たちの閉じた系(二人のデート)に、不要な干渉(ノイズ)を与えている! まるで、観測者が観測対象に影響を与える量子力学の不確定性原理そのものだ!」

咲良は、そんな二人のやり取りを見て、くすくすと笑った。

「いいよ、悠真くん。佐竹くんは、私たちの関係の**『補助線』**みたいなものだから。今日は三人で楽しもう」

「ええっ!?」



第9章 回転の法則と恋の遠心力


結局、三人の奇妙なデートが始まった。

悠真と咲良は、絶叫マシンに乗って「非線形な心拍数の増加」を体感したかったが、涼に誘導されて最初にたどり着いたのは、定番のメリーゴーランドだった。

「なんでメリーゴーランドなんだよ!」悠真は不満を露わにした。

「いいじゃねーか! まずは**『円運動の安定性』**から学ぶんだよ!」涼は、なぜか真顔で馬にまたがった。

悠真と咲良も、隣り合った馬に乗った。音楽が鳴り、ゆっくりと回転が始まる。

「相原くん、見てごらん」咲良が言った。「円運動は、速度ベクトルは常に変化するけど、角速度は一定に保たれている。これは、**『安定した関係』**のメタファーだと思わない?」

「ああ、なるほど……」悠真は感心した。

その時、涼が悠真に向かって叫んだ。

「おい、相原! お前の『安定した関係』を試すぞ!」

涼は、回転する馬の上から、悠真の手元にあった、咲良のために買った**コットンキャンディ(綿菓子)**を、狙いを定めて奪い取ろうとした!

「あっ、こら涼!」

悠真は、涼の攻撃を避けようと、無意識に体を傾けた。その勢いで、咲良の乗った馬の方へ体が倒れ込む。

ガタン。

咲良はバランスを崩した悠真を受け止めようと、咄嗟に腕を回した。

次の瞬間、メリーゴーランドのロマンチックな音楽と、涼の「うわっ!」という声の中、悠真は咲良の胸に倒れ込み、二人の顔は鼻先が触れるほどの距離になった。

悠真の心拍数は、絶叫マシンを遥かに超える、発散する無限大に達した。

「ご、ごめんなさい! これは向心力の誤算で……」悠真は顔を真っ赤にして離れようとした。

しかし、咲良は離れようとせず、彼の耳元で囁いた。

「悠真くん。遊園地で一番大切な法則はね、**『遠心力』**だよ」

「え……?」

「遠心力は、外へ逃げようとする力。でも、どんなに強い遠心力がかかっても、**『結びついた二つの質量』**は、決して離れないんだ」

咲良は、そのまま悠真の頭を抱き寄せ、少しの間、その温もりを共有した。周囲の視線はもはや関係ない。

二人が離れると、涼は隣の馬の上で、奪い損ねたコットンキャンディを空中でキャッチし、呆れたように言った。

「ちぇっ。俺の**『関係破壊係数』は、七瀬の『結びつきの強さ』**には勝てなかったか。完敗だぜ、相原!」

悠真は、涼の意図が、二人の関係を試すための、悪ふざけだったことを悟った。そして、咲良がそれを理解し、さらにその状況を利用して、二人の結びつきを証明したことに、再びノックアウトされた。



第10章 ゴールへの収束


その後、涼は「満足した」と言って、二人を祝福しながら去っていった。

悠真と咲良は、二人きりで観覧車に乗った。最高地点からの景色は、眼下に広がる遊園地と街並みを、まるで小さな模型のように見せていた。

「ねえ、悠真くん」咲良が言った。「私たちの初恋の微分方程式は、もう定常状態に達したと思う?」

悠真は、隣に座る咲良の手を握った。さっきのメリーゴーランドでの出来事を思い出し、もう顔を赤くすることはなかった。

「定常状態ではないと思うよ。定常状態とは、変化がないことだ」

彼は、咲良の瞳を見つめた。

「僕たちの関係は、定常ではない。僕たちの愛は、きっとこれからも、新しい公理を発見し、定理を証明し続けていく。それは、常に新しい解を生み出し続ける、動的な方程式だ」

「つまり?」

「つまり、終わりがないということだ。僕たちの愛は、無限の定義域を持つ」

咲良は満足そうに微笑み、悠真の肩に頭を預けた。

観覧車が、地上に降りていく。

それは、二人の恋が、最高の高さから、現実の生活へと降り立ち、新たな一歩を踏み出す瞬間だった。

続く

🌸 初恋の微分方程式🌸

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