都会の生活に慣れた内向的な悠太を、葵は「ユー坊」「観光客」とからかい、強引に山や沢へと連れ回す。そして、悠太に課せられた夏休みの宿題である**「絵日記」**を勝手にチェックし、「ときめき要素が足りない」とダメ出しをする。
ある日、秘密の沢で魚捕りをしていた二人は、足を滑らせて水に落ちてしまう。濡れて密着した瞬間、葵は突然、悠太に不意打ちのキスをする。悠太が動揺する中、葵はその出来事を「絵日記のノルマ達成」と笑い飛ばす。
その後、葵は悠太だけを秘密基地である古い小屋に連れて行き、一転して真剣な表情を見せる。この町には何もないこと、夏休みが終われば悠太は都会に戻り、自分はここに縛られることへの焦燥と、都会への憧れを打ち明ける。
悠太は、葵の抱える切実な不安に触れ、彼女の寂しさや優しさを理解する。彼は「必ず来年、この町にまた会いに来る」と約束し、叶わぬかもしれない初恋の感情を強く自覚する。
結末(別れの日)
夏休み最終日、駅のホーム。悠太は、初恋の全てを書き記した絵日記を葵に見せる。葵は、悠太に「恋を叶えるより、まずは都会で自分の夢を叶えろ」と、あえて突き放す言葉をかける。
列車が動き出す直前、葵は悠太の帽子に、メッセージとカブトムシの標本を忍ばせる。そこには「来年、これよりデカいオスを持って、迎えに来い。そのときは、もう逃げない」という、7年後の再会を予感させる切ない約束が記されていた。
エピローグ(7年後)
7年後、悠太は東京で出版社に勤め、夢を叶える。ある日、都会の駅で、悠太は資格を取得し上京していた沢村葵と偶然再会する。お互い夢を叶え、自信を手に入れた二人は、もう二度と逃げる必要のない場所で、7年間越しの初恋の続きを始めるのだった。