「私と、恋をしてもらえませんか? この世界を救うために」
異常増殖した植物によって文明が飲み込まれ、人類が静かな終焉を迎えようとしている未来。 都会の片隅で、ただ枯れるように生きる少年・**朔(さく)**のもとに、一人の少女が現れる。 名前は、シオン。 かつて伝書鳩が繋いだ文通相手であり、地球人と宇宙人の血を引く彼女には、ある残酷な使命があった。
それは、「恋」を知ることで完成する「最高のラブソング」を歌い、自らを星の意識へと溶かして、狂った自然を鎮めること。
恋が成就すれば、世界は救われる。 けれど、恋が深まれば深まるほど、シオンの体は透き通り、消失へのカウントダウンが加速していく。
「世界を救うための練習」として始まった二人の時間は、いつしか偽りなき真実の恋へと変わっていく。 廃墟の街、二人だけのデート、重なる心拍数。 救済の日は刻一刻と近づき、シオンの歌声は、別れの予感と共に美しさを増していく――。
恋に落ち、歌を奏で、世界を救う。 これは、運命に抗えない少年と少女が、終わる世界で綴った、最初で最後の初恋の記憶。