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狼男たちの収容施設に鳴り響く銃声が、突如として止んだ。拓真と亮太は異変に気づき、緊張しながら周囲を見渡した。
「何だ……?」亮太が低く呟いた。彼は狼男としての力を抑え込み、息を荒げながら立ち上がった。
米軍の兵士たちが無線で何かを話し合っている。隊長らしき人物が険しい表情で指示を出し、次々と部隊を撤退させ始めた。
「撤退? 何で?」拓真は驚き、兵士の一人に声をかけた。「何が起きてるんだ?」
兵士は苦い顔をして振り向き、短く答えた。「…命令だ。ここを放棄する。」
「命令? 誰が?」
「状況は機密だ。」それだけ言い残し、兵士は撤退していく。他の兵士たちも素早く装備をまとめ、施設を後にし始めた。
その場に取り残された拓真たちは混乱しながらも、施設のスピーカーから流れる緊急ニュースに耳を奪われた。
「速報です。複数の国で緊張が高まり、第三次世界大戦の危機が目前に迫っています。特に欧州と中東での軍事行動が活発化しており……」
亮太の顔が青ざめた。「まさか……これが理由か?」
「米軍は撤退して備えようとしてるんだ。」拓真が拳を握りしめた。「でも、ここを放置するなんて……施設の問題はどうなるんだ?」
その時、施設の奥から田中の冷笑が聞こえた。
「なるほどな。米軍も無力だということだ。」田中が悠々と現れる。「結局、人類の未来を変えられるのは私たちの技術だけだ。」
「お前が引き起こしたことだろう!」亮太が怒りに満ちた声で叫ぶ。「お前たちがこの世界を壊しているんだ!」
「壊している? 違うな。」田中は嘲笑を浮かべた。「これは進化だ。第三次世界大戦など、私たちにとっては一つのチャンスだ。」
「チャンス?」拓真が眉をひそめる。「何を企んでる?」
田中は笑みを浮かべたまま答えた。「簡単なことだ。この混乱を利用して、新たな秩序を築く。それだけだ。」
その言葉に新たな決意が芽生える。戦争の混乱に乗じて、田中たちが何を企もうとしているのかを突き止め、それを阻止しなければならない。
「亮太。」拓真が低い声で言った。「俺たちで止めるぞ。世界が壊れる前に。」
「……ああ。」亮太が頷き、鋭い視線を田中に向けた。「どんな犠牲を払ってもな。」