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「私・・・彼と結婚する・・・」
夢見心地でそうリーファンは囁いた、彼と愛し合ってから一週間・・・とうとう明日彼が日本へ帰る時が来た、リーファンはある一大決心をしていた、自分も彼に着いて行こう、彼はきっと喜んでくれる
父をここへ残していくのは心残りだけど・・・私は彼との愛に生きたい、彼と日本で温かい家庭を築きたい
隆二といると自分も一人前の人間だと思えるのだ、隆二のおかげで彼女の心の中にあった孤独感が消えた、隆二こそ自分の世界であり、隆二一人がいれば何もいらないと思った
自分の幸運が信じられなかった、隆二も自分を愛してくれている、それがまだ信じられないぐらいだった
大学の勉強も大事だけど、それは彼と出会う以前の私が考えていたこと、今の私は彼の愛ですっかり変えられてしまった
リーファンは大きくため息をついた
窓を見上げると空はどんよりとして、緑の谷には重苦しい雨雲がたれこめていた。リーファンはしばらく横になったまま、窓の外を見つめていたが、 やがて毎夜隆二との愛の記憶がよみがえってきて、顔がほてり、 全身が震えだした
幸せに熱くほてった顔を枕に押しつけた、彼は今、どう思っているのかしら? 私が彼に着いて日本に行くと言ったらきっと喜んでくれるわ、どんな事があっても彼を支える自信がある、私はきっと彼の役に立つ
幸せな気持ちでリビングに降りて行くと、うつろな表情の父がソファーに座っている、ソファーテーブルには札束が置かれていた、リーファンは生まれて初めてこんな大金を目にした
今父は彼女をじっと見つめている、その父の様子を見てなんだか落ち着かなくなった
―隆二はどこ?―
「お入り、リーファン」
父の声は驚くほど優しかった
「どうしたの?父さん、お仕事じゃなかったの?」
「いいや、座りなさい」
リーファンは何か嫌な予感がしたが、父の言う通り黙って向かいに座った
「さっき隆二は出て行ったよ、日本に帰った」
父が静かに言った、リーファンは、一瞬聞き間違いではないかと父の厳しい顔を見つめ、それから震える声で聞きかえした
「今、なんて言ったの?」
父は緊張した表情をくずさない