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#普通
野々さくら
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ありあ
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案内された部屋へ足を踏み入れた瞬間、一同は思わず息をのんだ。
そこはまるで教会を思わせる空間だった。
高い天井には重厚な梁が走り、シャンデリアの柔らかな光が室内を照らしている。
正面には祭壇のような壇上が設けられ、整然と並ぶ長椅子が神聖な空気を漂わせていた。
信愛は思わず辺りを見回す。
「なに・・・これ」
受付の女性は穏やかな笑みを浮かべ、静かに説明を始めた。
「こちらは、霊貴先生が死者と
交信するための『霊視の間』でございます」
「霊視の間・・・」
信愛はその言葉を小さく反芻する。
「霊視とは、このような特別な場で
行わなければならない神聖な行為ですから」
(ある事ない事を・・・)
信愛は心の中で苦笑する。
(でも、信じやすい人なら信じちゃうんだろうな)
一方、さくらは室内を見渡した。
長椅子には既に多くの人が静かに腰掛け、それぞれ不安そうな表情で前を見つめている。
「それに、この人たちは?」
受付の女性は視線を巡らせながら答えた。
「霊貴先生に救いを求める信者の方々です」
その人数の多さに、茜は目を丸くした。
「こ、こんなに・・・」
受付の女性は一同へ軽く一礼する。
「では、霊貴先生がお見えになるまで
しばらくこちらでお待ちください」
信愛は少し緊張した面持ちで頷いた。
「は、はい・・・」
そう言い残すと、女性は静かに部屋を後にし、重厚な扉が音もなく閉じられた。
室内には、信者たちの小さなざわめきだけが静かに響いていた。
部屋に漂う異様な空気を見渡しながら、焔垂は小さく鼻を鳴らした。
「なんか宗教臭がプンプンすんな」
茜も周囲を見回し、苦笑する。
「確かに・・いかにもって感じ」
信愛は静かに並ぶ信者たちを見つめ、複雑そうに呟いた。
「騙されてる人がこれだけ居るって事だね」
その言葉に、さくらは悔しそうに唇を噛む。
「この人たちから、お金を巻き上げてるんだ」
それを聞いていた美月は、鋭い眼差しで祭壇を見据えた。
「許せないわね」
しかし信愛は静かに首を横へ振る。
「でも大丈夫です。その悪事は今日
明らかになりますから」
その瞬間だった。
どこからともなく歓声が巻き起こり、静まり返っていた礼拝堂は一気に熱気に包まれる。
「ん?なに?なに?いきなり」
茜が驚いて声を上げる。
「何があったの?」
さくらも身を乗り出した。
信愛は入口へ視線を向け、指差す。
「あ、あれ!」
一同が振り返ると、霊視の間の入口には一人の女性が静かに立っていた。
金の装飾が施された仮面で素顔を隠し、純白のローブを身にまとったその姿は、神秘的というよりも舞台役者のような存在感を放っている。
茜が目を見開く。
「もしかしてあれが?」
信愛は静かに頷いた。
「霊貴冥孤だと思う」
霊貴は信者たちの視線を一身に浴びながら、ゆっくりと祭壇へ向かって歩みを進める。
その手には一本のマイクが握られていた。
祭壇へ立つと同時に、マイクから「キィーン」というハウリング音が一瞬だけ室内へ響き渡る。
会場は一瞬で静まり返り、信者たちは期待に満ちた眼差しを霊貴冥孤へ向けた。
霊貴はゆっくりと両手を広げ、穏やかな声で語り始める。
「人生の荒波は時に魂を揺さぶりますが
鶴の清らかな羽ばたきのように心を鎮め
冥府の王の智慧で運命の真相を見抜きたいものです」
一呼吸置き、さらに続ける。
「そして闇が迫る瞬間こそ、天啓の光による御導きで
皆さんで聖なる救いの道を掴みましょう」
信者たちは静かに耳を傾け、その一言一句に頷いている。
「そして、それには私の力が
必要不可欠だと自負しております」
霊貴は胸に手を当て、声に力を込めた。
「そう!私は冥府の王ハデスの代弁者・霊貴冥孤!
千年の封印を解き、現代に降り立った魂の導師!」
そう宣言すると、純白のローブの裾を優雅に翻し、手にした扇子を大きく広げる。
その芝居がかった所作だけで、信者たちは歓声を上げ、霊視の間は熱狂に包まれた。
霊貴は満足そうに微笑みながら続ける。
「本日も私は皆様の力となりますよう
皆様の暮らしがより豊かになりますよう
この力を使わせていただきます
本日はどうぞ宜しくお願い申し上げます」
深々と頭を下げると、霊視の間は割れんばかりの拍手に包まれた。
その様子を見ていた茜は顔をしかめる。
「何言ってるか、さっぱり分かんない
さくら?意味分かる?」
さくらは呆れたように肩をすくめる。
「バカだね茜は!」
一拍置き、苦笑しながら付け加えた。
「私に理解出来るわけないじゃんよ」
焔垂は腕を組み、小さく笑う。
「まぁ、みんなには私の力が必要だって
言いたいんじゃねーか?多分」
茜も納得したように頷く。
「ああ、なるほどね」
その時、霊貴がマイクを握り直し、会場を見渡した。
「では、本日1人目の依頼者
浦添朝陽さん・・・こちらへどうぞ」
突然自分の名前を呼ばれた朝陽は肩を震わせる。
「は、はい・・・」
緊張した面持ちで返事をすると、ゆっくりと席を立ち、祭壇で待つ霊貴のもとへ歩き始めた。
コメント
1件
×××さん、第十四話読み終えました…! 霊視の間の描写、神聖な雰囲気と同時に胡散臭さがじわじわ伝わってきて、信愛たちの冷静な視線がすごく効いてました。焔垂の「宗教臭がプンプンすんな」には思わず笑っちゃいました(笑) そして霊貴冥孤、登場の仕方から台詞回しまで完璧に“インチキ霊媒師”って感じで…これで信者を騙してるのかと思うとゾッとします。朝陽が呼ばれて緊張してるのが切ないです。次が気になる…!