楽屋で、移動車の中で、ホテルの部屋で。
どこであろうと、照は隙あらば俺にキスをする。
最初は軽く頬やこめかみに落とされるだけだったのが、付き合い始めてしばらく経った頃から、普通に唇を奪われるようになり——最近では前触れもなく舌を絡められることも増えた。
「んっ……!?」
夜、仕事終わりに二人で帰ってきた自宅の玄関。
鍵を閉めて靴を脱ぐ間もなく、背後から抱き寄せられ、あっという間に唇を塞がれた。
最初は軽く触れるだけのキスだったのに、舌が割り込んできた瞬間、びくっと肩を震わせた。
驚いて引こうとしたものの、後ろからしっかりと抱え込まれているせいで逃げ場がない。
「ん、んんっ……ちょ、待っ……」
必死で手を突っ張るが、腕の力では照に敵わない。
気づけば壁に押し付けられ、口の中をゆっくりとかき混ぜられる。
熱を持った舌が絡みつくたびに、思考が溶かされるようで、背中をぞくりと悪寒が走る。
——なんでこんなにキスが上手いんだよ、こいつは。
蕩けそうになる頭の片隅で、そんなことを思った。
ようやく解放されたときには、呼吸が乱れ、足元がふらついていた。
「……照、いきなりすぎんだろ……っ」
「ふっかの唇、好きだから」
「前に聞いたけど! せめて心の準備くらいさせて!」
息を整えながら文句を言えば、照は少しだけ目を細めて笑う。
「でも、そういうふっかの反応が可愛いから、やめられない」
「っ……!」
くそ、本当にズルい。
ふと、照の視線がまた唇に落ちる。
身構える間もなく、もう一度触れるだけのキスが落とされた。
「っ、照……!」
「んー、やっぱり好き」
「もう!! だからって何回もすんな!!」
顔を真っ赤にして怒る俺を見て、照は満足そうに微笑む。
「ふっか、可愛い」
その言葉がさらに悔しくて、真っ赤になった顔を照に見られたくなくて、くるりと背を向けた。
慣れてきたつもりだったけど、やっぱり不意打ちのキスには、これからもずっと慣れそうにない——。
コメント
3件
ふっかは一生慣れないね😆
かわいい夫婦だこと🤭
表現めっちゃ好きです!!!!