カーテンの隙間から朝日が差し込む。日の出の早まりをひしひしと感じ始めたこの頃、スマホの画面をタップすると、7:58の数字とその上に示されている3月の末という日付。
ベッドの横に備えつけられている、ベッドの下へとコードが伸びているリモコンの、上のボタンを長押しして、ゆっくりとゆっくりと起き上がる。
そして、サイドテーブルに無造作に置いてある、先程のものよりも小型のリモコンのボタンを押し、カーテンを開ける。
眩い朝日と鳥のさえずりが、俺を出迎えてくれる。
ぼんやりと外を眺めていると、この部屋唯一の出入口である大きめのスライド式のドアがコンコンコン、と3回叩かれた。
どうぞ、と返事をすると、担当の看護師さんがバインダーと吸引器を持って入ってくる。
「おはようございます!朝食は8時15分頃に担当の者が運んできますので、少々お待ちください」
元気な彼女を見ていると、今日も一日頑張れそうな気がした。
とは言っても、つい先日移動してきたこの個室では、一人ぼっち故何もやることがないのだが。
そう、俺は体調がますます悪くなってきたので、昨日集中治療室へ移動したのだ。呼吸器なしでは十分な呼吸ができず、合計3つの点滴が左右の腕に繋がっている。自分で起き上がることすらできず、ゆっくりとしか行動できなくなってしまった。毎日食事を持ってきてもらってはいるが、食べ切ることの方が少ないので現在の主な栄養源は点滴となっている。そのため、やせ細り体力のなくなってしまったこの体は、1日の大半を睡眠に費やしている。
「ありがとうございます!」
精一杯、元気な声で返す。声量こそあまり大きくないが、気持ちは伝わったようで看護師さんは笑顔で返してくれた。
簡単な診察と吸引を済ませ、おなかいっぱいになるまで朝食をとったら、暇になったのでぼーっと天井を眺める。
なんだか疲れたし、朝日のぽかぽかが気持ちよすぎてウトウトし始め、意識を手放そうとした。
が__
「こんにちはー!遊びに来ましたよー!!」
乱暴にドアが開かれ、見覚えしかない3人組がしにがみの大声と同時に部屋に入ってくる。
その後ろから、お静かに、と慌てながら3人に声をかける看護師さんが入ってきた。
「いやぁー、すみませんねぇ、うちのしにがみくんが」
「本当にすいません…」
さすがトラゾーとクロノアさん。他人のことですぐに謝れるのは本当にすごい。
それに対してしにがみは…
「ぺいんとさん!大丈夫ですか!?」
「いつの間にか居なくなってるんで、死んじゃったのかと思いましたよ!」
反省の色なし。ま、しにがみくんらしいけどね。
だが残酷なことに、俺が許していてもこわーい看護師さんは許すわけもなく、しにがみくんを病室から引っ張り出してピシャッとドアを閉めてしまった。
嵐のような3人がいなくなり、再び病室は一人ぼっちだったが、先程とは違いドア越しに怒号と許しを乞う声が聞こえてくる。
あぁ、平和だなぁ、と考えているうちに、またまた睡魔が襲ってきた。
彼らが戻ってくるまで、一眠りしよう。
「や、やっと終わったよ…」
「どう考えても集中治療室で大声を出すのが悪いだろ」
「それはそうですけど、あんなに怒らなくてもよくないですか!?僕、こう見えて病人ですよ?」
「3日後退院なのに?」
「むぅー…」
「ぺいんとさんはどう思います_」
「…寝ちゃった」
「しょうがない、また後で来よう」
「そうですね」
「…おやすみ、ぺいんと」
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ァ゚