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Side 大我
まぶたを開けると真っ白い天井が飛び込んできた。
そして視界に入ってきたのは、ピンク色のスクラブを着た看護師さん。
一瞬の間に悟った。倒れたな、と。
「大我くん、大丈夫?」
次に顔をのぞいてきたのは、いつもの担当医だった。
「先生…」
「まさか学校で倒れるなんて思ってもなかったよ。とりあえずのところ、心拍は落ち着いてる。まあ発作だね」
「そうですか…」
周りを見渡してみると、救急センターのようだった。そしてガラス越しには両親の姿がある。
「念のためICUね」
つまりは緊急入院だ。もうそういうのは慣れているから、聞いても格段驚かない。
病室へ車いすを押されながら、樹は大丈夫だろうかと思った。絶対心配しているに違いない。
いつもみたいに点滴と心電図をつけられ、今回は鼻カニューレまでついてくる。自覚はないが、そんなにひどい発作だったのだろうか。
必要なものはまた持ってくるね、と言って両親は出て行った。
ここに来るたびに、申し訳ないと思ってしまう。だって普通の心臓を持っていたらこんな苦労はしなくていい。
規則的に刻まれる心電図の電子音を聞いていると、いつの間にか眠りに落ちていた。
「きょも、おはよ」
次に目を開ければそんな声が聞こえてきたので、びっくりして起き上がる。
そばの椅子に制服姿の樹が座っていた。時計を見れば夕方だから、学校終わりだろう。
「っはあ、ビビった…。いるなら言ってよ」
「だって寝てんだもん」
樹はいつも通りにへらへらと笑っている。あんまり心配してくれている気配はないけど。
「俺こそビビったよ、先生に病室の場所聞いたら集中治療室って言うから。ってかマジ怖かったわ、目の前で倒れたし」
ごめん、と真面目に謝ると、
「謝れなんて言ってない。…俺も他人事じゃないしね」
それもそうだ、と静かにうなずく。
「でも来てくれてありがと」
樹は照れたように笑った。
「それより助けたことに感謝しろよな。だって誰もいないからさ、保健室に走って行ったんだべ。まあこっぴどく怒られたけど」
「え…。大丈夫なの?」
大丈夫だって、といつもの笑みを浮かべる。
「お前のためだから。んじゃ、お大事に」
腰を上げて出ようとした樹を呼び止めた。「待って」
「うん?」
「……樹さ、心、苦しいんでしょ」
え、と小さく声が漏れて、金色のピアスが揺れる。
「心臓が苦しかったら心も苦しくなると思う。俺はもう大丈夫だし、別に気に掛けなくていいから。じゃないと樹まで壊れちゃう」
「…そうか」
「樹も大事にね」
ああ、と片頬を上げた。そしてドアを開ける前に、振り返ることなく言った。
「俺らにはこれが普通なんだもんな。受け入れなきゃいけないと思うけど、きょもも一緒ならやってける気がする」
俺も、と笑う。
「絶対一緒に卒業しような」
おう、と力強い返事があった。
続く