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「もういい!ぼくのことなんて…どうでもいいんでしょ……っ!」
そこまで言うと
純一は過呼吸寸前のようにしゃくりあげて、本格的に声を上げて泣き出してしまった。
感情の制御が効かなくなる──
怒りと悲しみのバーストによって最悪の形で引き出されているのがプロの目で見ても明らかだった。
一度スイッチが入ってしまったパニックは、簡単には止まらない。
「祝ってくれるって、前に約束したのに…っ!りひとさんなら、絶対に忘れないで祝ってくれるって、ぼくずっと楽しみにしてたのにっ!」
「お祝いの言葉も、何もないなんて、ひどすぎるよ……っ!」
「ぼくのことなんて、お仕事が忙しかったら、簡単に頭から忘れちゃう程度の、どうでもいい存在なんだよね!!ねぇそうなんでしょ?!」
「ち、違う!そんなこと絶対にない!純一は俺にとって──」
必死に否定の言葉を紡ぐものの、パニックに陥った純一の耳にはどんな弁明も届かなかった。
彼はさらにヒートアップし、完全に理性を失った様子で
目に入ったリビングの物を手当たり次第に掴んだ。
箱ティッシュ、ソファのクッション、プラスチック製のリモコン──。
それらが次々と、激しい風切り音を立てて俺の身体に投げつけられる。
パカパカと身体に当たる度、俺の口からは
「ごめん」「俺が悪かった」という謝罪の言葉が壊れたマシンのように溢れ出たが
今の純一の傷ついた心には、何一つ届くことはなかった。
「ぼぐのこどなんが…忙じいと後回しに、なっちゃうんだ……っ」
それどころか、投げつける物がなくなると
彼の自暴自棄な感情はさらにエレートしていく一方だった。
「もう知らない…っ!りひとさんなんて嫌いっ!!だいぎらい……っっ!!!」
とうとう鼓膜を破らんばかりの声で吐き捨てると、純一は顔を涙でぐしゃぐしゃにしたまま
自分の部屋へ逃げるように駆け込んでいった。
「ちょ、待って! 純一!話を…っ」
咄嗟に我に返って追いかけるが、目の前でバタンと激しい音を立てて扉が閉まり
間髪入れずにガチャンと内側から鍵をかけられてしまった。
扉越しに何度もドアを叩き、声をかけるが、中からの返事はない。
「純一、本当に…ごめん…」
返事の代わりに中から聞こえてくるのは
過呼吸一歩手前の、純一の激しい嗚咽と涙をすする音だけだった。
心理士としての冷静な脳が、今この状態で無理やり扉をこじ開けて中に押し入っても
恐怖と混乱を煽るだけで完全に逆効果だと告げていた。
(……っ、仕事に追われていたからといって、大切な純一の誕生日を忘れるなんて、俺は一体何をやってるんだ……)