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運命死んだな
二人の呼吸が重なり部屋の熱が落ち着きを見せ始めた頃
秋声は藤村の腕の中にぐったりと体を預けたままぼんやりと開いた窓を見つめていた。
「信じられない…僕がこんな…君なんかに」
「『君なんか』とは手厳しいね」
「あんなに熱心に僕を求めていたのはどこの誰だっけ」
藤村は勝ち誇ったような色を一切見せずただ慈しむように秋声の髪を指で梳いていく。
その落ち着き払った態度が秋声には帰って居心地が悪く、けれどこれまでにない安心感を与えていた。
「…うるさい」
「それは…その…本能が勝手にしたことだから」
「本能、か。君はそうやって理屈で蓋をしようとするけれどその蓋をこじ開けるのが僕の特権になったわけだ」
藤村の指がまだ脈打つ項の痕に触れる。
秋声はびくりと肩を震わせ藤村の胸元を軽く拳で叩いた。
「…調子に乗らないでよね。番になったからって僕が君の言いなりになると思ったら大間違いだよ」
「わかってるよ。君は僕を拒み、毒づき、それでいて僕の傍でしか安らげなくなる」
「そんな君を一生かけて愛していくんだ」
藤村の瞳は静かな狂気にも似た深い執着を宿している。
秋声はその視線から逃げるように顔を伏せたが離れようとはしなかった。
「…一生なんて長いよ」
「僕にとってはきっと短すぎるくらいだよ」
「少し休もうか。明日の朝、君が僕の隣で目覚めるのを今から楽しみにしているよ」
藤村は秋声を抱き上げると静かにベッドへ運んだ。
秋声は「子供扱いするな」と小さく呟いたが包み込まれるような藤村の香りに抗えず意識は深い眠りへと沈んでいった。
深い夜、二人の境界線は完全に消え去りただ一つの運命だけがそこに静かに横たわっていた。