優雅(ゆうが)な音楽が流れ始め、それぞれが踊り始める。
「レリア、僕と踊ってくれますか?」
「は、はい!」
僕はレリアにお辞儀をして手を差し伸べる。
そしてレリアは頬を赤くしながらカーテシーをして手を重ねる。
僕はレリアに微笑んでダンスホールへ連れて行く。
ダンスホールへ行き、僕の右肩にレリアの左手を乗せて、右手は僕の左手に重ねる。
空いた右手はレリアの腰に回しカドリールを踊り始める。
踊り始めは僕達に好奇心や興味の目を向ける人達の視線で、レリアは少々硬かったが少し話しかけていくと緊張が解けたのかだんだんと表情が柔らかくなった。
たまに微笑んで踊ってくれるので、その笑顔を見た人が顔を赤くしている。
凄い破壊力だ。女である僕でも気が抜けば見惚れてしまいそうだ。
……よく見るとさっきの令息達が倒れているが()
「リィ兄様、私じょうずにおどれているかしら?」
「ああ、とても上手だ。ほら、周りの人達が見惚れてしまうくらいにね」
「ありがとう、リィ兄様」
そういうとレリアはホッとしたようにはにかむ。
つられて僕も微笑み返す。
すると、ご令嬢達から黄色い声が聞こえてくる。
レリアの表情はご令嬢にまで通じるのか、本当に末恐ろしい妹だ。
1曲踊ってダンスホールから離れると、一気にご令嬢に囲まれた。
「素晴らしい踊りでしたわ!」
「相手を気遣うのがお上手なのですね!惚れ惚れしましたわ!」
「私もあのようにエスコートされてみたいですわ……」
「まあ貴方!抜け駆けはいせませんわ!」
「貴方達!アビュラル様の御前で見苦しいことはお辞めなさい!」
お、おぉ…?
これがモテってやつ…?
どうやらレリアを美しく魅せるためにエスコートしたのがウケたようだ。
「ほら、そんなに睨み合わないでくれないか?せっかくの可愛らしい顔が台無しになってしまうよ。女の子は笑顔が一番可愛いのだから、ね?」
そうたしなめるとご令嬢達はみるみる顔を赤くして
「そ、そうですわね……//」
「か、可愛いだなんて……//」
「私としたことがはしたない……//」
と言った。
「それと、今回僕は妹のパートナーとして来てるから他のご令嬢と踊る気はないんだ、ごめんね?」
そう言って首を傾げて手を合わせるとご令嬢達は慌てて首を振って大丈夫だと言ってくれた。
少し1人になりたいと言ってバルコニーへ行くと今まで溜めていたため息をつく。
「はぁ…」
貴族って大変だなあ。
舞踏会ではあまり目立たないようにするつもりだったが、来て早々2回も囲まれてしまった。
……すっかり紺青色(こんじょうしょく)に染まった空を見上げる。
これから色んな人と関わっていくんだ…
そう考えると少し憂鬱(ゆううつ)になってしまう。
平和に過ごせるように頑張ろう……。
心でそう思っていたその時、
ガサガサ…
__何処からか足音が聞こえた。
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