テラーノベル
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同日、夜8時頃。場所は、オフィス街のど真ん中にあるシアトル系コーヒーショップ。
最後にこうした店に来たのは、若い頃、当時付き合っていた女に連れられて以来だ。
天利「……君達、今日は潜入調査だ。
粗相のないようにね」
俺の背後には、川田を含めた側近の3人。
ガタイのいい男4人が、俺を筆頭に店へ入る姿は、どう見てもコーヒーを飲みに来た客には見えない。
川田「組長……メニューが呪文みたいっす。
ショート、トール、グランデ……?」
側近A「く、組長、この『カスタマイズ』ってのは、なんらかの隠語ですか?」
不慣れな側近たちが殺気(という名の緊張)を漂わせる中、カウンターの若い店員さんは、プロの笑みを崩さなかった。
店員「いらっしゃいませ!
本日は期間限定の『完熟メロン・フラペチーノ』がおすすめですよ!」
天利「メロンか、いいね。彼女が喜びそうだ。
それを4つ……いや、1つと普通のアイスコーヒーを1つ……テイクアウトでお願いします」
店員「ありがとうございます!
期間限定のフラペチーノは、サイズが『トール』のみとなっておりますが、よろしいでしょうか?」
天利「トール……ああ、はい大丈夫です」
店員「アイスコーヒーのサイズはいかがなさいますか?」
天利「あ、えーと……トールで」
店員「かしこまりました」
天利「君達は?」
川田「甘いのはちょっと……」
店員「苦味がお好きな方には、こちらのカフェアメリカーノが……」
川田「じゃ、じゃあそれで」
組員A「俺は……」
慣れない単語に一瞬戸惑ったが、店員さんの鮮やかな誘導で、なんとか全員注文を完了した。
側近A「あー!緊張した!
今の若いヤツら、よくこれをすんなりこなせるもんだ……」
天利「だねぇ……。
おじさんついていけないよ……」
川田「でも、姐さんはスラスラ注文するんでしょ?」
天利「多分ね。
彼女と行った時は待ち合わせに使っただけだし、既に提供済みだったから、注文するところ見てないんだけど」
組員B「スゲェな〜!カッケェな〜!」
数分後。
俺は、フラペチーノが溶けないうちにと紙袋を抱え、大急ぎで赤坂の「城」へ帰還した。
天利「ただいま、シズちゃん。今戻ったよ」
キッチンを覗くが彼女の姿はなく、リビングダイニングにもいない。
ふと見ると、奥の書斎……彼女の「聖域」のドアがわずかに開いている。
すると、そこから「ひょっこり」とシズちゃんが顔を覗かせた。
シズカ「おかえりなさいませ! 天利さん!」
彼女の手には、さっきまで読んでいたのであろう分厚い漫画雑誌が握られていたが、俺の姿を見るなり、慌てて背後に隠したのが見えた。
天利「……お邪魔だったかな?
これ、お土産だよ。
シアトル系の期間限定のやつ」
差し出した紙袋を見た瞬間、シズちゃんの目がこれ以上なく輝いた。
シズカ「……! 完熟メロンのフラペチーノ!
これ、どこも完売で諦めていたんですの!
嬉しい……!」
シズちゃんは子供のように大喜びし、冷蔵庫から成形したハンバーグを取り出し焼き始めてくれた。
天利「(あんなに喜んでくれるなんて……。
しかも他の店では売り切れだったのか……)」
俺は心の中で小さくガッツポーズをした。
今日の晩飯は、俺の胃を気遣ってくれた「おろしポン酢ハンバーグ定食」だ。
天利「(美味い……。
肉の旨みが大根おろしで中和されて、いくらでも食える)」
俺が定食を堪能している横で、シズちゃんは「今日は特別、チートデイですわ!」と宣言し、フラペチーノのストローを吸い込んだ。
シズカ「ん〜! 甘い……幸せですわ……」
幸せそうに頬を緩める彼女を見ながら、俺はブラウンのレースアップシューズを脱ぎ捨てた時の解放感以上の喜びを感じていた。
天利「(……側近たちを怯えさせた甲斐があったな。
……さて、明日は昆布の最高級品でも探してみるか)」
外の世界では何者であっても、この城の中では、彼女の笑顔一つで俺の序列は最下位で構わない。
メロンの香りに包まれたリビングで、俺は静かにそう確信したのだった。
nappa
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コメント
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みぅです🤍🥀 第26話、読み終わりました……! もう、天利組長たちがコーヒーショップでメニューに戸惑ってる姿が可愛くて仕方なかったです(笑)「カスタマイズは隠語ですか?」って、ホント強面なのにギャップ萌え……! そしてシズちゃんの「完熟メロン・フラペチーノ」へのあの喜びよう! どこも完売で諦めてたって言うから、天利さんが買えてよかったなって心から思いました。彼女の笑顔で序列が最下位でもいいって思えるの、もう完全に沼ってますね、天利さん…📖 おろしポン酢ハンバーグも、チートデイのフラペチーノも、お互いを想い合う優しさが伝わってきて、心がほっこりしました🌙 次回も楽しみにしてますね!