テラーノベル
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#ダークファンタジー
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きっかけは、ほんの些細な違和感だった。
スマートフォンのホーム画面。
見慣れたSNSや仕事用アプリの並びに、見覚えのないアイコンが居座っている。
水色を基調とした、優しげな男の子の横顔。
その下には『マモルくん』とだけ書かれていた。
「なにこれ……ウイルス?」
指先で長押しし、削除を選択する。
けれど、画面に表示されたのは無機質なシステムメッセージだった。
『システムエラー:このアプリは削除できません』
「は?何これ、気味悪い……」
最近のスマホは、勝手にプリインストールされる広告アプリでもあるのだろうか。
私は舌打ちを一つして、その画面を閉じた。
売れないWebライターである私には、得体の知れないアプリの不具合に構っている余裕なんてない。
今日も納品間近の記事が山積みだ。
ようやく作業に区切りがついたのは、深夜二時を回った頃だった。
コンビニで買った冷めたパスタを胃に流し込み、重い足取りでゴミ出しに向かう。
街灯がまばらなアパート裏の道は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
そのとき
ポケットの中で、スマホが短く震えた。
『マモルくん:あと3秒で右に避けて』
通知のプレビュー。
なぜか私の思考は、恐怖よりも先に「今、右に避ければいいの?」という疑問に従ってしまった。
一、二……
三歩目、反射的に体を右側の塀へと寄せた。
───ガガガガガッ!!
鼓膜を突き破るような轟音。
直後、私の左側を
ライトも点けずに猛スピードで走ってきたマウンテンバイクが通り過ぎていった。
風圧で髪が乱れ、心臓が跳ね上がる。
あと数センチ左にいたら、間違いなく弾き飛ばされていただろう。
呆然と立ち尽くす私の手の中で、スマホが再び震えた。
『マモルくん:危なかったですね。怪我はありませんか、花火さん?』
……どうして
アカウント登録すらした覚えがないのに。
どうして、このアプリは私の名前を知っているの?
暗闇の中、水色のアイコンだけが
私の顔をじっと見つめているように発光していた。