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☆☆彡.。
月日は流れ、あれから3年が経った。
果物の搾りたてのジュースを売りながらの旅路は、物珍しさも相まって、行く先々で結構繁盛させてもらった。
店が繁盛する傍ら、その土地の噂話を耳にできるお蔭で、手際よく悪人を発見することにも繋がった。しかも悪いことは、大抵集団でおこなわれている。殺める際には苦労するが、想像よりも目標人数へ確実に近づいた。
「とはいえ、まだ458人。残り542人を滅するのに、最低3年以上かかるのかよ……」
王族の妾になったマリカが、どんな生活をしているのか――元気に暮らすことができているのか気になっても、忙しさゆえに生まれ育った土地に足を向けられなかった。
「お兄さん、そのチョーカーの石すごく綺麗ね。なんの石なの?」
お昼が過ぎて、ちょっとした客の隙間ができたときだった。店先に顔を出したお客様に視線を飛ばした瞬間、ひゅっと息を飲む。
銀髪の長い髪に、色違いの両目を持つその女性は、微笑みながら僕を見上げた。お腹が大きい姿で、妊婦さんだとすぐにわかったのだが、目の当たりにしたマリカに似た容姿のせいで、問いかけられたセリフに答えられない。
「い、いらっしゃいませ……」
「お兄さん、私の質問に答えてくれないの?」
「えっと、すみません。いただいたものでして、なんの石なのかわからなくて」
チョーカーの石を握りしめながら、なんとか答えると、お客様は寂しげに微笑んだ。
「私の見た目に、ギョッとしたんでしょ? 慣れるまでみんなそうなの、わかってるから大丈夫」
「いえ、あの、僕の知り合いにも同じような方がいらっしゃって、驚いたというか」
「えっ?」
「懐かしさも相まって、言葉がすぐに出ませんでした。すみません」
頭を深々と下げたら、「謝らないで、私こそ失礼なことを言っちゃったわね」と声をかけられた。
「お兄さんのお店、ずっと探してたの。友だちがすっごく美味しいって、教えてくれたから」
「そうでしたか。お客様の流れを見て、あちこち移動を繰り返していたので、探すのが大変でしたでしょう?」
頭をあげて話しかけると、お客様は大きなお腹を擦りながら小さく笑う。
「ふふっ。ラクダで移動するお店だから、ゆっくりだろうなぁと思って、散歩しながら探したのよ。見つけることができて、ラッキーだったわ」
「わざわざ探していただいたお礼に、サービスしますね。なにをご用意しましょうか?」
手書きのオーダー表を見せて、注文を待った。
「さっぱり系がいいかな、甘ったるいのは苦手なの」
「でしたら、柑橘系のミックスジュースはいかがでしょうか。今朝仕入れたばかりのバレンシアオレンジやグレープフルーツを中心にした、栄養価の高いものをお作りしますよ?」
相手が妊婦さんだからこそ、そんな言葉が出てしまった。