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『恵菜さん、あなた、結婚前に比べたら、かなり太ったんじゃない?』
久々に夫婦で勇人の実家へ立ち寄った時、開口一番で良子に言われた。
『はい……』
『何キロ太ったのかしら?』
そこまで聞く? と恵菜は唖然としたけど、義母の眼差しは鋭く、答えを聞き出すまで開放してくれなさそうだ。
『えっと…………にっ……二十キロ……増えまし……た……』
『二十キロ!?』
声を上ずらせながら、目を丸くしている姑は、呆れたように肩を大きく落とした。
自分でも、嫌というほど自覚しているけど、改めて他人に言われると、心が抉られる。
『そんな体型だと、いつか子どもができた時、出産する時が大変よ。今日から少しずつ、ダイエットした方がいいわね』
(出産? 私……まだ子どもの事なんて、一ミリも考えてないんだけどな……)
喉まで出掛かった言葉を、彼女は、困惑の表情を覗かせながら呑み込んだ。
『太っている女性って、行動がトロいじゃない? いい服を着ても、デブだと全然サマにならないし。あなた、まだ若いんだし、勇人の綺麗な妻でいたいでしょう?』
良子の年齢は五十代前半だけど、体型もスマートだし、ショートカットがよく似合う若々しくて綺麗な方だ。
『それに私、ご近所さんから、勇人の奥さんって、体格が良くて肝っ玉母ちゃんみたいね、なんて言われたら、すごく恥ずかしいし……』
(私だって……こんな体型になってショックなのに……そこまでズケズケ言う事ないんじゃない……?)
恵菜は結婚が決まった時、良子が、嫁と何でも話せる仲になりたい、と言っていたのを思い出す。
いくら何でも、そこまで言わなくてもいいんじゃないか。
恵菜は良子に対し、不信感を抱いたのと同時に、姑の言葉を聞きながら悟った。
ああ、この人は見た目重視、世間体重視の人なんだ、と。
それでも恵菜の中には、嫁は姑の言う事を素直に聞く、といった固定概念がある。
彼女は、義母の良子に言われた日から、ダイエットに励んだ。
食事制限、ウォーキング、間食をしない、晩酌をしない……など。
思いついた事は、何でも実践してみたけど、一向に痩せる気配はない。
だけど、良子の『ダイエット推奨発言』は、恵菜だけに止まらなかった。