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横浜の街がハロウィンで騒がしい夜。仮装した人々で溢れる中、中也は帽子を深くかぶって、ため息をついていた。
中也「まったく、どいつもこいつも浮かれやがって……。」
そうぼやきながらも、コートの下にはハロウィンを意識したとしか言いようが無いシャツを着ている。
?「やぁ、中也〜。その服、もしかしてハロウィンを意識したのかい?」
ふざけた声と共に、群衆の中から現れたのは太宰治だ。
黒いフード付きのマントを被り、死神の鎌を持っている。
中也「…ンだよ、その格好。」
太宰「死神だよ。」
中也「自殺願望な奴が魂取る側なんておかしいだろ」
中也がツッコむと五月蝿いな〜と言ってマントを広げ、懐に引き寄せる。
太宰「折角だし中也も仮装しようよ」
中也「俺はパスだ。イベントを全力で楽しむ精神が分からねぇ」
ドンッと突き飛ばすが、太宰は笑いながら余裕の顔。
太宰「え〜魔法使いとか似合いそうだよ?」
中也「ンでだよ!」
太宰「だって、小柄s…」
中也「殴るぞ。」
⸻
しばらく言い合いながらも、なぜか一緒に街を歩くことになる。その時、太宰が急に止まって中也に手を差し出す。
太宰「はい、中也。トリックオアトリート。」
中也「はぁ?ンなもん持ってねぇし」
太宰「じゃあ、トリートじゃなくてキスがいいってことかな?」
中也「良いわけねぇだろ!」
中也の拳が太宰の頭に落ちる
でも太宰はまったく懲りずに笑って
太宰「痛い痛い。じゃあ来年はペア仮装でもしようか、中也♡」
中也は「誰がするか」と言いつつ、
口の端がわずかに緩んでいるのを、太宰はちゃんと見逃さない。
夜が更け、街の喧騒が少し静まった頃。
並んで歩くふたりの影が、街灯に伸びて重なる。
中也「……ま、悪くなかったな。」
太宰「うん?」
中也「今日だよ。意外と。」
太宰「ふふ、やっぱり中也も楽しんでたんじゃないか。」
中也「うるせぇ。」
太宰が口角を上げる。
太宰「ねぇ中也、来年も一緒に行こうね。」
中也「……勝手にしろ。」
でもその声は、少し照れて、どこか柔らかかった。