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「あの子、また表彰されたんだって」
教室の隅で、私はそっとスマホを伏せた。
通知欄には、クラスのグループチャット。
拍手のスタンプが、滝みたいに流れている。
あの子は、何でもできる。
顔もかわいい。
成績もトップ。
運動もできる。
性格もいい。
先生も、友達も、みんなあの子が好きだ。
それに比べて、私は。
テストは平均点。
運動は苦手。
前髪はうまく決まらないし、写真を撮れば変な顔。
「あの子みたいになれたらな」
それが口ぐせになっていた。
文化祭の日。
あの子は主役で、私は裏方だった。
スポットライトの下で笑うあの子は、やっぱり完璧で。
私は舞台袖で、そっとカーテンを握っていた。
そのとき。
「あ、いた」
振り返ると、あの子が立っていた。
「小道具、全部そろえてくれたの、ありがと。
あれがなかったら、私、途中で止まってた」
え?
「……私、何もしてないよ」
「してるよ。
いつも静かに、ちゃんとやってくれてる。
私、ほんとは、そういうの全然できないから」
あの子は、少し困ったように笑った。
「正直、うらやましい」
その言葉は、私の心にまっすぐ落ちた。
完璧だと思っていたあの子にも、
できないことがあった。
光の当たらない場所で、
誰かが支えていることも、ちゃんと見ていた。
私は「あの子より劣っている」んじゃなくて、
「あの子とは違う」だけだった。
スポットライトは浴びないけれど、
舞台を回しているのは、確かに私だ。
帰り道、スマホを開く。
グループチャットに、あの子からメッセージが届いていた。
《今日のMVPは裏方のみんな!特に○○(私の名前)!》
通知が鳴り止まない。
でも不思議と、もう比べる気持ちはなかった。
あの子みたいにならなくていい。
私は、私の場所で光ればいい。
そう思えた夜だった。