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あれもしかして同期ペアかこれ💜💚((🖤💚なことは理解済みです

こんな優しくて境遇も似てる子が近くにいたら、🖤反抗期拗らせてる間にとられちゃいそう。続きが待ち遠しいよー
授業終了の鐘が鳴ると、帰り支度を終えた深澤は、亮平の腕を掴み、強引に昇降口までへと引っ張った。思いの外、力が強くて、亮平はどうすることもできない。自分と大して変わらない華奢な深澤のどこにそんな力が秘められていたのかと驚くほどだ。
「ちょっ!何するの?ホームルームまだ……掃除だってしてないし」
靴箱の前で、亮平の靴を並べると、履けよとばかりに深澤は顎をしゃくった。そして漸く握っていた手を離す。
「今日一日、お前、ヘンだった。だから放課後は俺に付き合え」
「なんで……っ!」
「恋人だから…てのは、まだ冗談だけど、本気にさせてみせるし。それに、気になる子を笑顔にさせたいのが男ってもんだろ?」
「…………///」
照れもせずに真顔でそんな恥ずかしいことが言える深澤を、不覚にも亮平は、格好良いと思ってしまった。そして、同い年の深澤に話を聞いてもらいたいとも。
「後で先生のところに一緒に謝りに行ってくれるなら…」
「ふはっ!!いいよ。お安い御用だよ。行こうぜ」
深澤は亮平の肩を組むと、そのまま二人は校門を出て行った。
「ふーん。亮平も苦労してるんだな」
「別に俺なんか全然…。母さんと近所の人がよくしてくれたおかげだよ」
ファストフード店に入り、向かい合わせで深澤と話している。亮平は家庭の事情を打ち明けた。
自分が片親であること、高校生になる予定の来年から働きたいと思っていること、深澤は亮平の想いを否定することなく、全て優しく受け止めていた。深澤の柔らかい雰囲気に、亮平も話していて少しずつ頭の中が整理されていく。
「でも、今更父親に会うのはそれとこれとは別…っていうか」
「そぉかぁ?俺は羨ましいけどね」
「羨ましい?」
「うちも、片親なんだよ」
「えっ」
深澤は何てことないように言う。おまけに貧乏でさ、と深澤は続けた。
「母ちゃんに生活能力がないから、中学上がるまで施設で育ったんだ」
「え……」
「今は再婚して、真面目な親父が出来て、引き取ってもらえてる。そしたら、今度はうちの母ちゃん腹ぼてになってさ」
深澤は明るく、お腹の辺りを摩ると、おどけて笑って見せた。
「ものすごーく年の離れた妹が出来るの、俺」
「そうなんだ…」
「性別わかったのはつい最近な。今は俺もこんなだし、自由にしてるけど、そろそろかなって思ってる」
「そろそろ?」
「家出ようかなって。大学行くかは考え中。就職も視野に入れて家は出るって決めてる」
「そう…なんだ。そっか」
亮平は自分より過酷そうな現実をあっけらかんと話す深澤に心惹かれていた。境遇が似ていることも心強い。
「あの……ふっかは本当のお父さんに会いたいとか、思わないの?」
「もう会えないんだよ」
「えっ」
「死んだんだ。それで、母ちゃん長いこと働けなくなっちゃった。だから言っただろ?俺には亮平が羨ましいって。どんな人か分からないけど、会ってみろよ。良い人でも悪い人でも、会えるだけマシなんだからさ」
「う…うん」
深澤の力強い言葉に、亮平は励まされるしかなかった。そして深澤のことを見直した。
単なるチャラ男だと思っていたのに…。
話を聞いてみる前と後とでは受ける印象がまるで違う。亮平は深澤に親近感と、ほんの少しの好意を覚えていた。
「もし、その親父さんが嫌な奴なら家出しろよ。俺と一緒に暮らそうぜ〜」
冗談めかして誘う深澤に、思わずそれもいいなと考えてしまう。大胆に誘った深澤の方は、と言えば、耳まで真っ赤になっていた。可愛いなと亮平はそんな深澤を好ましく思った。何となく後ろ向きになっていた気持ちが明るくなった。母さんが好きになった人だ、いい人かもしれない。
「俺、とにかく、お父さんに会ってみる」
「ん。頑張れよ」
くしゃくしゃっと頭を撫でる深澤の笑顔が、その優しさとともに、亮平の胸に沁み込んでいた。