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青い空の下、湯船に浸かりながら智絵里と触れ合えるなんて……恭介は腕の中でぐったりしている智絵里を抱きながら、満足感に浸っていた。
「大丈夫? 智絵里」
「う〜ん……のぼせそう……」
「よし、じゃあ部屋に入ろうか」
智絵里の体を抱き上げ部屋の中に入ると、彼女の体をそっとベッドに横たえる。冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、蓋を開けて智絵里に渡す。
「飲めそう? それとも飲ませて欲しい?」
「……いっぱい飲みたいから自分で飲む」
体を起こして水を口に含むと、再びベッドに倒れ込む。その姿に、恭介は唾をゴクリと飲み込む。
今日はいつも以上にヤバい。さっきのヤキモチもかわいいし、お風呂で上気した表情も。だけど本当は車の中から、気持ちを抑えるのに必死だった。
『本当は中学の時、恭介のことをちょっとだけカッコいいと思ってた時期もあるよ』
まさか智絵里の口からそんな言葉が聞けるなんて思ってもみなかったのだ。
中学の時はきっと俺のことなんて眼中になかっただろうと思っていたんだ。智絵里のことだから、俺の名前も知らなかったかも……そんなふうに考えていた。だから俺を見てくれていた時期があることに感動すら覚えた。
俺の元カノのことは聞かないと言ったけど、俺は聞いてもいいのかな。というか聞きたかった。
智絵里にそっと布団を掛けると、恭介はその隣に座って彼女の頭を撫でる。気持ちよさそうに笑った顔に胸が高鳴った。
「智絵里……俺も聞きたいことがあるんだけど、聞いてもいい?」
「……内容次第ね」
「車の中でさ、俺のことをカッコいいって思ってた時期があるって言ってただろ? あれっていつぐらいの話?」
「……そんなこと聞いてどうするの?」
「……知りたいだけ。智絵里の六年間の中で、どれくらいの間、俺をそんな目で見てくれてたのなって」
智絵里は顔は合わさず、恭介の指に自分の指を絡める。
「……中学のニ、三年の時かな……。恭介がサッカー部のレギュラーになったのってその辺りでしょ? ゼッケンをつけて練習試合をしている時、横でめぐたんが恭介の応援をしたりするから、嫌でも目に入ってくるのよ……」
「お前、嫌でもって……」
「足が速いなーとか、今のパスって上手だなーとか、ゴール決めた時の笑顔が素敵だなーとかね……思ってたよ……」
「……いつ頃から人気のある同級生の一人に格下げされたの?」
「高等部に上がった頃かな。外部生も入って来たし、めぐたんのイケメンレーダーが大量感知しちゃったものだから……」
ということは、その友達に流されて俺を見てたってことか? 智絵里の気持ちじゃないと思うと少しがっかりした。
「でも高二になって、一花のことがあって、恭介の本性を知ったら、恋愛のものとは違うけど、すごく好きになったよ……」
恭介は智絵里の上に覆い被さり、キスを繰り返す。
「恭介?」
「他にも気になってた奴っていたの?」
「……内緒」
内緒? それって他にもいたっていう肯定じゃないのか? なんだかムカムカしてくる。あぁ、これがヤキモチってやつなのか。
恭介はゆっくり首元から胸まで唇を滑らせる。智絵里の敏感な部分を口に含み、舌を這わせる。
「やだっ……恭介ってば……」
「教えてよ。他にいたの?」
「……生徒では恭介だけよ……」
《《生徒では》》。その言葉には、違う意味も含まれていることに気付き、恭介は自分の不甲斐なさを実感した。
「……タイムマシーンが欲しい……」
「あはは! 何その発想!」
智絵里の胸に顔を埋めて呟いた。
「昔に戻って、智絵里に好きって言いたい。友達になるより前に恋人になりたい……」
先ほどの智絵里の発言で、恭介は裏の意味を感じ取ったのだろう。智絵里には恭介が言おうとしていることがわかった気がした。
私があいつを好きになる前に戻りたい。恋人になって私のことを守りたい。そう思ってくれたんだろうな……。恭介の優しさが私を温かく包んでくれる。
「……前にも言ったけど、友達から入ったから今があるんでしょ? あの頃の私たちじゃ、お互い本性を隠して、付き合っても上手くいかなかったかもしれないよ」
「……」
「でも恭介、さっき言ってくれたじゃない。私の初めては全部恭介なんでしょ? あっ、そう考えたら、私の学生生活で初めてときめいたのは恭介ってことになるんじゃない? 本当に初めては全部恭介になってるね」
智絵里は恭介を抱きしめる。
「私の初めてが恭介で、すごく嬉しいよ……」
恭介も力いっぱい智絵里を抱きしめる。
「愛してるよ……智絵里……」
「うふふ、知ってる……私も愛してる……」
「うん、俺も知ってる……」
何度愛し合っても、もっと求めてしまう。友情も心地良かった。でも愛情の方がもっとしっくりくる。