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「ふーん。ロンの方がかわいいけどな」
なんだか意地悪な言い方をする。
リオはムッとして、軽く口を尖らせる。
「なんだよ。自分のことは話さないのに、俺に質問ばかりすんなよな。早く帰り方を教えろよ」
「だから帰さねぇって言ってんだろ」
「はあっ?」
久しぶりにデックと再会し、しかも助けてもらったので耐えていたが、だんだんと腹が立ってきた。リオがベッドから降りてデックの前に立ち、デックのシャツを掴もうとしたその時、「なにをしている」と落ち着いた声がした。
振り向くと、扉の前にアシュレイがいた。いつ入ってきたのか気づかなかった。
デックがリオから視線を移して不機嫌に言う。
「なんだよ、入る前に声かけろって、いつも言ってんだろ」
「かけたが返事がなかったから入った。そもそもここは俺の所有物だ。自由に動いて何が悪い」
「そうかもだけど、今は俺の部屋だろ、ここは。それに俺はあんたの部下じゃない。他人だ。だから最低限の礼は尽くせよ」
「おまえに言われてもな…。まあ次は気をつけるとしよう。ところでそこの君、何と言ったか…」
「リオだよ。俺と同郷の。前に話しただろ…本当に他人に興味ねぇな」
デックの正面にいたリオは、デックと並んでアシュレイと向かい合った。そして隣で小さくため息をついたデックを見て、この二人の関係が気になった。
アシュレイが近づき、部屋の中央にある椅子に優雅に座る。ギデオンの所作も上品だけど、それ以上に上品な動きで、リオは思わず見とれた。
アシュレイは何者なのだろうか?ふと|足下《あしもと》のアンを見ると、興味なさげに床に伏せて目を閉じている。アンは良い人と悪い人を見分けられると、リオは信じている。そのアンが大人しいのだから、悪い人ではないのだろうか?
アシュレイが、アンからリオへと順番に視線を移すと、これまた優雅に微笑んだ。
「リオ。体調はどうかな?」
「もう大丈夫です。ありがとうございます」
「そうか、よかった。俺はアシュレイと言う。隣国の出身だ。デックとは長いつき合いになる。ところで君が一緒にいた狼領主の噂は、聞いたことがあるよ」
「はあ…そうですか」
「デックが君に会えてとても喜んでいた。君もそう?」
「はい。デックは死んでるかもしれないと思っていたので…。生きていて嬉しいです」
「勝手に殺すなよ」とデックがリオの背中を軽く叩く。昔もよくこうされていたなぁと懐かしく思い、デックに顔を向ける。
「だって急にいなくなったじゃん。おばさんがすごく悲しんでいたよ」
「……」
デックが、なにかに耐えるような、辛そうな顔をする。そしてリオから視線を逸らして窓を向く。外を見てるのかロンを見てるのかはわからない。少しして掠れた声がした。
「母さんは…どうしてる?」
「デックがいなくなった次の年に、病で亡くなった。おばさんが亡くなった後、おじさんは村を出ていったよ」
「そうか…」
しばらく黙っていたが、次にこちらを向いた時のデックの顔は、再会した時の少し怖い印象がする顔に戻っていた。