僕は再びトリスタのいた焚き火の前に来た。
今彼は一人きり。
このまま気絶させてお持ち帰りしたい所を僕は必死に抑え、いつも彼に話しかけるように心を落ち着かせて背後から話し掛けた。
「なぁにしてんの?」
トリスタが勢いよく僕の方に振り向く。
嗚呼、その驚きと恐怖の混じった表情最高…。
「ゴスフェ…!」
彼が僕の方を見ていて気づかなかったのか、辺り一面は霧に包まれていた。
さすがは邪神。
本当に良いタイミングだ。
僕は気を取り直し、トリスタを少し叱った。
先輩としては当然のことだよね。
「君がキラーを辞めさせられてサバイバーになったってトラッパーから聞いてどんな顔してるのかな~って見に来たらあのザマだよ。なに?あの恋い焦がれた顔は。サバイバーに恋をするなんてこの世界じゃご法度なのは承知の上だよね?」
彼の返事は
「君には関係ないよ…」
だけだった。
そこまであの女が好きなの?
「ふぅん?まぁいいや。ねぇ、一つ質問。」
「な、なんだよ…」
「まだキラーに戻りたいと思う?」
僕はまだトリスタがキラーとしての自覚があるのか、
そして、僕の元に戻ってくるのかという意味も込めてそう聞いた。
「うん…」
心臓が飛び出しそうな程僕は嬉しかった。
良かった。彼は僕の元に帰ってきてくれるんだ。
まるでリードを外して逃げてしまった犬が、飼い主の元に戻って来るほどの嬉しさだ。
しかしここで感情的になってしまってはダメだ。
落ち着け僕。
「そう。実は僕、君にピッタリのゲームを用意したんだ。」
「ゲーム?」
「服装変わってるのに気づいた?」
僕は邪神にもう一つだけお願いをしていた。
それがこれだ。といっても僕のエゴなんだが。
「な、なんで!?」
「実はちょっと邪神に頼んで色々準備をしてもらったんだ。じゃあ早速だけど、ゲーム説明するよ」
「う、うん…」
「ゲーム内容は、僕から5分間一度も見つからずに隠れ続けること。要はかくれんぼだね」
「…ん?」
彼は小首を傾げた。
嗚呼、その表情も愛おしい…今すぐ抱き締めたい。
でも今は我慢だ。
殺す間際に僕の今までの思いを全て注いであげなきゃ。
「かくれんぼ?」
「そ。超簡単じゃない?僕から5分間見つからずに隠れるだけでいいんだよ?」
「確かにそうだけど…。ねぇ、僕からも質問いいかい?」
「いいよ。何?」
「そのゲームに負けたら…どうなるの?」
やっぱりトリスタは勘が鋭いな。
「ん~…その時は君を殺すよ。どうせ死んでもこの世界じゃ生き返るんだし。で、僕に勝ったら君をキラーに戻してあげる!でも…ただ殺すだけじゃ面白くない。」
「え?」
「ねぇ、君はあのサバイバーが好きなんだよね?というか好きか」
はぁ…あの女の話をするだけで腸が煮えくり返りそうになる…。
「結論付けしないでよ!」
「実際合ってるでしょ?うぶリスタ」
「うぶじゃないし!!」
嗚呼、こんな会話がずっと出来たらいいのに。
彼の赤面した表情…耳まで赤くなっちゃって。
「はいはい。話脱線しちゃったね。戻すけど、君がゲームで負けたら、僕が君に成り代わってそのサバイバーとお話しようかな?」
「は?」
彼の表情が変わった。
そうか…そんなにあの女に思いを寄せているのか…。
「そんなの許すわけないだろ!!」
トリスタは自身のコートからナイフを取り出し、数本を僕に向かって投げた。
しかし、それを意図も容易くよける。
一本くらい当たってあげたら良かったかな?
「ナイフ投げの感覚はまだ残ってたんだ。良かった良かった。」
「うるさい!!ゴスフェなんかが彼女に近づくな!!」
「そんなに言うなら速く決着つけようよ~。どうする?ゲームする?」
僕はわざと彼を煽り、ゲームをさせるように仕向けた。
「もちろん。」
楽しみだなぁ…彼の綺麗な肌を僕のナイフで貫くのを想像しただけで興奮する…。
彼が一生懸命走って僕から距離を取る。
しかし、彼はまだ気づいていない。
「僕、パークは使わないなんて一言も言ってないからね」
あの女の話をしてる間に『地獄耳』を発動しておいて良かった。
幸い彼には気づかれなかったみたいだし。
「嗚呼、なるほど。地下室に行ったんだ。だとすると隠れたのはロッカーだね。」
さぁトリスタ?君がいったい誰のものか…たっぷり教えてあげる。
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