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いったい何分ここに隠れているのか…。
「(そろそろ5分たってもいい頃なんじゃ?)」
ゴスフェに聞き忘れていたが、どうやって5分経ったのか調べるんだ?
ゴスフェ自身から『5分経った』と言われるまでここで隠れればいいのか?
それとも敗けを認めるまでずっと探し続けるのか…?
「どうしたら…」
小さく呟いた瞬間、地下室に続く階段から足音が聞こえた。
「(来た…!)」
声を圧し殺し、見つかりませんようにと祈った。
ギシッ…と木の床が軋む音がする…。
「トリスタはどこかな…」
僕が隠れているロッカーを通りすぎ、隣のロッカーの扉を開けた。
「ここじゃないか…やっぱりかくれんぼを提案したのは間違いだったかな…」
そうだ、そのままゴスフェが敗けを認めてくれ。
こんな狭いところにずっと居たくない。
心臓が口から出てしまいそうな程、僕は恐怖に煽られていた。
速くこの場から出ていってくれ。
どうか見つからないでくれ。
サバイバーがロッカーに隠れている間は、こんな感覚なのだろうか…。
もしかすると、僕がキラーに戻ったとしても同情してしまうんじゃないかと心配になってきた。
こんな状況で考えるのもなんだが…。
「(彼女に会いたい…僕のこの気持ちを落ち着かせてくれるのはあの子しかいない…)」
僕は、焚き火に照らされてはにかむ彼女の表情を思いだし、心を落ち着かせる。
「(そういえば、さっきから物音やゴスフェの声がしない…)」
気配はするが、どこにいるのか分からない…。
「(出てもいいのかな…)」
僕は恐る恐るロッカーから出た。
このまま出なければ良かったのかもしれない。
いや、むしろ僕がゴスフェの提案したゲームに乗った時点で僕の結末は決まっていたんだ…。
「みぃつけた」
「あ…」
ゴスフェは息を殺して、僕の隠れていたロッカーの隣に立っていた。
信じれないほどの力で腕を掴まれ、背中を壁に押し付けられる。
「い、痛いよ…ゴスフェ…!」
彼からの返答はなかった。
無言で掴む力を強められる。
みしみしと音がする…ゴスフェはこんな力があったのか?
正直怖い…。
「な、何か言ってよ…!」
そう僕が言った瞬間、ゴスフェの顔…というよりマスクを鼻辺りまでずらしていた顔が僕の目の前に来た。
「え…」
漏らした声を塞ぐように何かが僕の口と重なる。
それがゴスフェの唇だったことに気がついたのはそう時間がかからなかった。
「っ…んぅ…ご、ごしゅ…ふぇ」
僕の舌を甘噛みし、上顎を彼の舌でなぞられる。
初めてのファーストキスがゴスフェなんて…
彼女としたかったのに…。
大事に取って置いたのに…僕は自然と涙が出てきた。
悔しいのに気持ちいい…。
「んっぅ…ぷはっ…」
ゴスフェと唇が離れ、僕の唾液とゴスフェの唾液の混ざり合ったそれがたらりと糸を引いて、熱い息を吐く。
「はぁ…はぁ…」
「しちゃったね、キス…」
うっとりとした声と表情で僕の頬を触る。
「なんで見つけられたんだって顔してるよね。まぁ君から飛び出してきたんだから言う必要ないと思うけど。僕がここへ真っ先に君を探しに来れたのは…パークを使ったから」
「え…?」
パーク?
「そんなの反則じゃないか!僕そんなの聞いてないよ!?」
「誰がパークを使って見つけたらダメって言ったの?僕が考えたゲームだ。僕の好きなようにできる」
そんなの勝手すぎる…ということは僕があのロッカーに隠れているのを承知の上でわざと別のロッカーを開けたりしていたのか…?
「最っ低…!」
「まぁそんなことは置いておいて…ねぇ、トリスタ。僕とのキスはどうだった?嫌だった?気持ち良かった?」
一体ゴスフェは僕をどうしたいんだ?
殺すなら速く殺してくれよ…。
「そんなの…分かんないよ…分かんないってぇ…」
僕は腰が抜けてその場にへたりと座ってしまった。
「うぅ…」
「もう一回したい?」
したくないのに…あの子のために大事にしておいたのに…
「うん…」
あの快楽が忘れられない…。
ゴスフェは微笑み、もう一度僕とキスをした。
僕の舌を吸い、ねっとりとお互いの舌を絡め、僕の歯をなぞられ、腰辺りがゾクゾクとした。
「んぅ…んん…!」
頭が真っ白になる。
酸欠で離れようとしても、ゴスフェが離れないようにガッチリと抱き締められてしまい、動こうにも動けない。
どうしてこんなことに?
僕は、ゴスフェのことはなんとも思ってないのに…。
僕が好きなのは…あの子なのに…。
助けて…。
「ぷはっ…」
「はぁ…最高…」
ゴスフェは、僕の首筋を舐めたり時々キスをしたりした。
「んぁっ…んぅ…」
反応したくないのに、自然と声が漏れ、体が強張ってしまう。
「声出してもいいのに。君らしくない」
「そ、そんなの無理に決まって…あっ…」
声を出さないように手で口を覆うが、すぐにゴスフェが僕の腕を掴み、声を出してしまう。
「い、いや…やめ…んぅ」
「その割にはいい声出してるけど。」
ゴスフェは僕の耳を舐めた。
「んあっ!!(ヤバい…!)」
今までより大きな声を出してしまい、僕は恥ずかしくなって顔が熱くなった。
「トリスタの弱点見つけちゃったぁ」
語尾にハートがつきそうな程甘ったるい声が僕の耳元で聞こえ、さらにゾクゾクと体が粟立った。
「楽しもうよ、トリスタ。」