彼女にこのボイスレコーダーを返されてからもう数日が経った。
これで良かったんだ。
寂しいと思ってしまう自分がいる…本来ならこれが正解なんだ。
「でもなんでかな…まだ気持ちが晴れない。」
ふと僕はあのボイスレコーダーに目が止まった。
これはまだ、録音できる容量があったはず。
「もしかしてあの子…」
僕はそれを手に取り、再生ボタンを押した。
数秒経っても聞こえない。
「…まぁ、そりゃそうだよね…ん?聞こえない?」
可笑しい…普通なら僕が撮った音声が流れるはずなのに…。
「まさか…!!」
『ザッザッ…』
風の音が聞こえてきた…。
僕の考えは正しかったんだ!
『あー、あー…ちゃんと撮れてるかな?』
彼女の声だ…!
目元が熱くなってきた。
『えーと、ジウン。今までありがとう。あなたと居た生活は本当に楽しかったわ。これからも大変な事があるかもしれないけど、頑張ってね。応援してるわ。………愛してる。』
音声が途切れた。
「何で…何でもっと速く言ってくれなかったの?」
最後の言葉だけを何度も再生した。
『愛してる。』
それがどれだけ僕の心を締め付けるか…。
「うぅっ…ぅぁ…ぁああ~!」
大の大人が声を出して泣いてしまった。
やはり彼女は女神だ。
僕を唯一救ってくれた、僕だけの女神。
ベッドの枕に顔を沈めて目を閉じた。
忘れるなんてそんな簡単なことじゃない。
「次はちゃんと、面と向かって言ってよ…」
そう呟いて眠りに着いた。
次の日、僕は朝一で儀式があり、急いで準備をしていた。
服を着て、ピアスを付け、髪をセットし、
そして最後のメイク。
僕は一手間掛けて、ある細工をした。
「…よし」
涙がこぼれ落ちた様なマスカラが目に入る。
彼女に再び出会った時に、優しく抱き締めてもらい、ハンカチで拭って貰えるように。
僕も君を愛してる。
「僕だけの女神様…」
こんな僕でも、君は愛してくれる?
【おしまい】
コメント
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全て読ませていただきました!! とても楽しく読めました!! これからも応援しています! 別の作品も楽しみに待っています✨