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#ざまあ
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「ゴミ出し、忘れるなよ?お前の唯一の仕事なんだからな」
翌朝、直樹は鏡の前で入念にヘアセットをしながら言い放った。
「分かってるわ」
私は平然を装い、直樹が脱ぎ捨てた靴下を拾い上げる。
直樹が家を出た瞬間
私は「ゴミ出し」のために玄関を出た。
そのままマンションのゴミ集積所
ではなく、非常階段の踊り場へ向かった。
手元には
直樹が「シュレッダーにかけるのも面倒だ」と丸めて捨てた、昨夜のジャケットのポケットの中身。
「……あった」
くしゃくしゃになったレシートの数々。
その中に、一枚だけ異質なものがあった。
高級タクシーの領収書。行き先は直樹の会社とは正反対の方向にある、不倫相手・莉奈のマンション付近。
さらに、その裏側には直樹の筆跡で殴り書きされたメモがあった。
『4/15 接待代(⬛︎⬛︎商事・佐藤様) 35,000円』
4月15日。
その日、直樹は「残業で遅くなるから夕飯はいらない」と私に連絡してきた日だ。
実際には莉奈と会い、そのタクシー代までも「接待」と偽って会社に請求しようとしている。
「……やっぱりね」
私は震える手でスマホを取り出し、そのレシートを鮮明に撮影した。
直樹は知らない。
私がかつて勤めていたWEB制作会社で、経理のシステム構築の手伝いもしていたことを。
奴が会社で使っている精算システムの「穴」も、今の私なら予測がつく。
家に戻ると、私はすぐにPCを開いた。
WEBデザインの仕事の合間に、直樹の会社のホームページから組織図と役員の名前を調べる。
(直樹、あなたは私を『世間知らずの主婦』だと思って油断している。でも、その油断があなたの首を絞めるのよ)
その時、リビングの電話が鳴った。
表示されたのは、直樹の実家───義母からだった。
「もしもし、詩織さん?直樹から聞いたわよ。あなた、最近家計のやりくりが疎かになってるんですって?」
「お義母さま…それは───」
「直樹が可哀想だわ、外で必死に働いているのに、家を守る奥さんがそれじゃあ……」
義母の嫌味な声が鼓膜を刺す。
直樹は自分のクズっぷりを棚に上げ、実家にまで私の「無能ぶり」を言い触らしているのだ。
「……すみません、お義母様。以後、気をつけます」
私は感情を殺して電話を切った。
受話器を置く手が、怒りで白く震える。
(…でも、親子共々バカにできるのも今のうちですよ。あなたの自慢の息子さんは、もうすぐ『必死に働く場所』さえ失うことになりますから)
私は、撮影したレシートの画像を「抹殺計画」という名前のフォルダに移した。
1円の誤差で私を罵倒した男が、数万円単位で会社を騙している。
この矛盾を突きつける瞬間が、今から待ち遠しくてたまらない。
夜、帰宅した直樹は、私が作った質素な夕食を見て鼻で笑った。
「相変わらず貧乏臭い飯だな。普通もっとマシなもん作れるはずだけどな」
私は微笑んで、直樹のグラスに安物の麦茶を注ぐ。
「……ねえ直樹、お仕事の方は順調?経費精算とか、大変じゃない?」
直樹の動きが一瞬、止まった。
「……何だ、急に。お前に関係ないだろ」
「ただ、あなたが一生懸命働いてくれているから。……漏れがあったら大変だと思って」
直樹はフンと鼻を鳴らし、再び食事を始めた。
その顔には「何も知らない馬鹿な妻」を見下す、醜い余裕が張り付いている。
笑っていられるのも、今のうちよ。
【残り97日】