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そんなこんなで過ごしていると、この二人の約百年にもなる戦争は我が国の敗戦で終了した。勿論、捕虜として捕まえていたフランス王国と西華は返した。
それから暫くして、イングランド王国とスコットランド王国は同盟を組んだ。
近頃は帝国主義なるものがあるらしく、この国も吸収されないようにしなくてはならない。もしかしたら、この国がその帝国主義の国になるのかも知れないな。
そんなふうに思っていたある日、大英帝国の化身である主が生まれた。
これまでのイングランド様、スコットランド様の育児で学んだ失敗を生かせるように頑張ったつもりだ。
イングランド様のように女性に目が無く、少しチャラい者にならぬように。スコットランド様のように、感情をすぐ人に読み取られるようにならぬように。色々と試行錯誤して育てたつもりだ。
「違う。ナイフとフォークはこう持つんだ。もう一度」
食事のマナー、社交辞令、政治、地理、敵国の情勢、その他諸々を主には教えた。できたらできた分だけ褒めるようにした。だが、褒め過ぎたらしい。少々傲慢な所が出るようになってしまった。子育てとは難しいのだ。
スコットランド王国がイングランド王国に取り込まれて、はたまた様々な事が起き続けたが、そのたびに何とかやって行けてた。
そうして、イングランド様とスコットランド様は死んだ。まぁ、国の代替わりをしたのだから自然な事だ。悲しみなんて感情は無かった。今度は主が国を代表する化身になった。
それから、大航海時代と呼ばれる時代になり、現在のアメリカ合衆国やニュージーランド、オーストラリア連邦等の国を植民地にし、そのドールと化身をこの屋敷に連れて来た。
化身の教育は、主がすることになったが、ドールは俺が教育する事になった。
どの子にも女性に対して礼儀正しくと、マナーは守れと、自身の主を信じ、導き、支えろと教えた。
弟達は本当に可愛らしかった。英厳兄様と俺の事を呼び、ちょこちょこと後ろをついてくるのだ。可愛過ぎると思う。
「主、弟達が可愛い。どうしよう」
「最近それしか言っていないじゃないか」
二人でのアフタヌーンティーを嗜んでいると、そんな会話をするようになっていた。
本当に弟達は可愛いのだ。この前だって。
『英厳兄様。あの、絵を描いてきたんですけど、見てくれますか?』
上目遣いで炎利が絵を渡してきた。
相変わらず上手く笑わせてくれないこの鋼のような表情筋を少し恨んだ。
『仕事中だ。後にしろ』
本音が盛れてしまえば舐められるかもしれないし、何よりこいつらの前での格好良い英厳の姿が崩れてしまう。流石に駄目だろうと思いわざと突き放すような言葉を放つ。
『分かりました』
炎利は、しおれた葉のように落ち込みながらトボトボと書斎を後にした。
俺は矢張り不器用だと再度自覚した場面だ。
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