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「早く水に入りたいよ、君の言う(精霊の滝)はまだ先かい?」
辺りが昼間の様な月夜の夜・・・
汗だくになっている隆二がスイスイ山を登っていくリーファンの後ろで叫んだ
宗次郎のしっかりした作りのスポーツサンダルを履いてきてよかった、そう思いながら隆二は数歩先にリーファンがいる崖から突き出た大きな三日月形の岩棚を目指してさらに歩いた
クスクス・・・「もうすぐよ、ほら!体力不足さん!とっても素敵な夜の滝の話をしたら、泳ぎたいって言ったのはあなたよ」
岩棚の上部から下のよどみに向かって、サラサラと水が音を立てて流れ落ちている
月明かりがこんなに昼間の様に辺りを照らすなんて隆二は知らなかった、本当に彼女の言う通り、目が慣れて来ると今では小さな石ころ一つ取ってもハッキリ見える
いつもの様に宗次郎が二人を放って眠りにつくと、楽しい二人の時間が始まった
そしてリーファンが夜にとても美しい滝で一人で泳いでいると聞いて、隆二は行ってみたいと思ったのだ
隆二はリーファンの後について、両側に大きな石が転がる、川と崖に挟まれた細い砂利道を進んだ
崖の表面は苔におおわれていて、道のあちこちに倒れた木の幹が転がっていた、そこを抜けると、しばらくは張り出した岩の下を身をかがめるようにして川沿いをさらに進んだ
「とっても素敵な所なの、この上流よ」
リーファンは白い歯を見せながら可愛らしく笑った、彼女の言った通り、ランタンなどいらないぐらい満月の明かりが辺りを昼間の様に照らした
「ここよ!」
「うわぁ~~~!すごい!!」
隆二はあまりの光景に目を見張った、目の前には人ひとりが余裕でシャワーでも出来そうな滝が勢いよく流れ落ちている
眼下では、深そうな濃い青緑色に美しく光る水が波立っている、穏やかな水際に青い雲のようだ、水面にトンボが飛んでいる、岩からは小さな花が咲き乱れている、あの花は何て言う花なんだろう・・・こんな景色はまるでCG映画の中でしか見たことがない
「泳ぐ?」
「ああ!ぜひそうしたい!」
隆二は嬉々として服のシャツにボタンをかけて脱いだ、引き締まって筋ばった筋肉、労働者らしく日焼けした肌は、若々しく艶があって首と腕がいっそう黒い、彼の動きに合わせて背中の筋肉が動く、 彼はジーンズを脱ぐまえに、少しためらいながら彼女に振り返った
「・・・トランクスで泳いでもいいよね?」
クスクス・・・
「私は気にしないわ」
隆二の笑顔にリーファンは目がくらみそうになった時、彼の履いているジーンズは地面に落ちた
谷間に立つ水しぶきのなかでとんぼがきらめく、水は深く澄んでいる、月明かりが幻想的だ
「滝の下でシャンプーすると気持ち良いわよ」
そう言いかけてリーファンは息をのんだ、隆二がトランクス一枚の姿で立ち上がったのだ
なんて逞しいの・・・逞しいけどムキムキではない・・・
分厚い胸に脚も他の部分と同じく見事だった、じっくり見たいと思ったその時、彼は完璧なフォームでナイフのように鋭く水に飛び込んだ
そしていったん川底まで沈み込んで、次に水しぶきをあげ、笑いながら水から顔を出して髪を後ろに払った