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僕はアイシュ。平凡に暮らす農民の息子だ。といっても、僕は怠け者で、親が農作業をしているのに手伝わないという堕落っぷり。部屋の中では本ばかり読んでいる。僕の家では代々から、その時代に獲得した書物は保存し、子へと引き継ぐという習慣がある。だから家の中には沢山の読みきれないほどの本があるのだ。
ある日、僕が本棚を探していると、とてもボロボロで古びた本が一つあるのに気がついた。なんだろう、とそれを手に取り、タイトルを見てみると「ルアフの日記」と書いてあった。
「ルアフという人が書いた日記?誰だろう。この本だけなんでこんなに古臭いのだろう」
僕は内容を読んでみると、一ページ目にはこういう日記が書いてあった。
「土の上に塩を盛り、そこに水をかけ、火で炙り、それを風に晒しながら指を触れ、こう言う。シャマイム。そうすればあちらとこちらを行き来できる。」
僕はなんのことかはわからなかったが、その謎の言葉を実験するために準備をしてみた。
「さて、火に炙ることができた。これを風に晒しながら指を触れて…シャマイム!」
…何も起こらない。やはりよくわからないでたらめだったのだろうか。
ピカッ!
その時激しい光が視界を一瞬だけ覆った。よく見ると、ここは僕の家の中ではない。その魔法は本当だったみたいだ!
「ここは…?」
少し怖くなったが、眼の前に大きな建造物がある。その中から一人の女性がこちらへ歩いてきた。
女性は僕に笑顔で声をかけた。
「こんにちは。あなたは地上から来たのね。それも予測済みよ。アイシュ君でしょう?私はマイムと言うの。ここはシャマイムという都市よ。天使が住んでいる場所なの。」
僕は驚いて彼女を見た。彼女は美しい顔立ちをしており、背中に白い羽根が生えていた。
「天使…?シャマイム…?それって本当なの?」僕は信じられない気持ちで聞いた。
「もちろん本当よ。あなたはルアフの日記を読んだんでしょう?彼はシャマイムの王で、地上とシャマイムを行き来する方法を発見した人なの。彼は地上にイベントを与えて人間の行動を観察し、知恵の書を作っているのよ。」 彼女はそう言って、僕に手を差し出した。
「あなたもシャマイムを見てみたいでしょう?私が案内してあげるわ。さあ、ついてきて。」 僕は彼女の手を握り、シャマイムの中へと歩いていった。
マイムは僕にシャマイムの様々な場所や人々を紹介してくれた。シャマイムは空に浮かぶ島のような形をしており、美しい景色や建築物が多かった。シャマイムの住民はみな天使で、羽根で空中を飛び回っていた。彼らはみな優しくて親切で、僕にも笑顔で挨拶してくれた。僕はシャマイムの文化や歴史に興味を持ち、マイムと仲良くなった。
「マイムさん、ここの人たちは仕事をしてるの?僕の親が農業をしているように」
するとマイムは言う。
「私達は飲まず食わずで生きていけるの。天使だからね。だから人間のように奪い合うことがないわ。ただ、私達は使命として知恵の書を作っているわ。私たちの言葉の因果は人間には理解不能だけれど、地上の物事を完全に予測することができるわ。そして、ルアフは地上にイベントを発生させて、何が起こるかを見て、人間から得た知恵を書き記しているの。」
僕はシャマイムの仕事について納得できなかった。
「イベント?では災害もそのイベントの一つ?戦争は?」僕は聞いた。
「そうよ。よくわかったわね。悪いことが起きたら大体はイベントだと思って良いわね。でもそのイベントを良い方向に進めるのも悪い方向に進めるのも人間の因果よ。人間を試しているの。」
僕はそれが本当に正しいのか疑問に思った。
僕はシャマイムでしばらく暮らし、その様子を観察していたが、ある日マイムと一緒にシャマイムの王宮に行った。そこで僕はルアフという男性に出会った。彼はシャマイムの王であり、ルアフの日記を書いた人だった。彼は僕に興味を持ち、僕に話しかけてきた。
「こんにちは。予測によれば、あなたは地上から来たんだね。私はルアフと言うよ。シャマイムと地上を行き来する方法を発見した人だよ。」 彼はそう言って、自慢げに笑った。僕は彼に怒りを感じた。
「あなたが発見した方法で、私はここに来ました。でも、あなたが地上に与えるイベントがどんなものか知っていますか?あなたは人間が苦しんでいることを気にも留めていませんね。あなたはただ因果で遊んでいるだけですよ。」 僕はそう言って、彼に詰め寄った。
彼は驚いて僕を見た。「何を言っているんだ?私たちが与えるイベントは物事のほんの一部に過ぎないんだよ。それに、私たちは知恵の書を作っているんだ。それがどれほど価値のあるものかわかっているか?」 彼はそう言って、僕に知恵の書を見てもらうよう勧めた。
僕は知恵の書を見て驚いた。そこには想像を絶するあらゆる価値のある知恵が書かれており、科学や哲学や芸術などの分野で地上の人間が発見したことや発明したことよりも優れているものが多かった。
知恵の書には、宇宙の起源や構造、生命の起源や進化、人間の心や意識、社会や文化の発展や変化、倫理や美学や宗教などに関する深遠な理論や思想が記されていた。
僕はシャマイムの住民が与えるイベントが本当に価値があるのかもしれないと悩むようになった。
しかし、僕はまだ地上の人間が苦しんでいることに同情し、シャマイムの住民がそれを無視していることに怒りを感じた。
ルアフは僕の表情を見て、満足そうに笑った。
「どうだ?驚いただろう?これが私たちが作っている知恵の書だよ。これは地上の人間には決して手に入らないものだよ。私たちは地上にイベントを与えることで、人間の行動や反応を観察し、その結果から知恵を導き出すんだよ。それが私たちの仕事であり、使命であり、楽しみでもあるんだよ。」
彼はそう言って、僕にさらに知恵の書を見せてくれた。
「これは私が最近作ったものだよ。地上で起きた大きなイベントに関するものだよ。例えば、このページには、ある国で起きた騒動について書かれているよ。私はその国に使者を送り、騒動を起こしたんだ。それがどうなったかわかるか?」
彼はそう言って、僕に問いかけた。
僕は彼の言葉に怒りと悲しみを感じた。彼は人間の命や平和を何だと思っているのだろうか。彼はただ自分の知恵を増やすために、人間を駒のように扱っているのだ。僕は彼に反論した。
「それがどうなったかわかるか?それはあなたが知るべきことではないよ。あなたは人間の因果に干渉してはいけないんだよ。あなたは人間の自由や選択を奪っているんだよ。あなたは人間に対して罪を犯しているんだよ。」
僕はそう言って、彼に詰め寄った。彼は冷静に僕を見た。
「罪?私たちは因果で生きているんだよ。それに、君もその知恵の書のすばらしさを見ただろう。」
彼はそう言って、僕にさらに知恵の書を見せてくれた。
「これは私が最近作ったものだよ。地上で起きた大きなイベントに関するものだよ。例えば、このページには、あなたが地上に帰ったらどうなるかについて書かれているよ。私はあなたにシャマイムへの行き方を教えたことで、あなたの因果を変えたんだよ。その結果、あなたが地上に帰ったらどうなるかわかるか?」 彼はそう言って、僕に問いかけた。
僕は知恵の書を見て呆然とした。そこには「アイシュが地上に帰ったら、世界平和が実現する」という予言が書かれていた。僕は信じられなかった。僕が地上に帰れば、人類が救われるということだった。
結果的にどうなったかを聞きたい? 僕はそれをすることができなかった。僕はシャマイムの因果に縛られてしまったからだ。僕は自分の自由や選択を奪われてしまったからだ。僕はシャマイムの住民と同じ罪を犯してしまったからだ。シャマイムの住人は、「君は平和を実現する」という一文を僕に見せ、見せたことによる因果を観察したに違いない。
そして、彼らはその観察から新しい知恵を得た。「人間は平和を望んでいるが、平和を必ずしも選ぶことができない」彼らはその知恵を知恵の書に書き加え、皮肉めいた笑いを浮かべた。