テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
現世から戻った颯真は『死者面談室』に通された。
タブレットを持った三途川が、深々と頭を下げた。
「おかえりなさい、佐山颯真さん」
「三途川さん、久しぶり」
「見事に怨念を晴らして、現世の未練を無くしましたね」
「はい。きれいサッパリ。もう未練はないで」
三途川はタブレットの画面を確認した。
「おめでとうございます。天国行きが決定しました」
「やっと成仏できる。長かったなぁ」
「え~~と……、あれ?」
三途川がタブレットの操作を始めた。
颯真は不安になった。
「え? なに? まだ、なんかあるん!?」
三途川は姿勢を正すと、颯真の目をしっかりと見た。
「佐山颯真さんは、人助けをしましたね」
「え?」
「犯罪組織から女性を救った、とあります」
桜志郎が梨那を送ろうとした店は、違法な売春組織だった。
もし働いていたら、梨那は犯罪者として逮捕されていた。
「この功績により、新たに〈特典〉が付与されました」
「それって、①か②ってこと?」
特典①は、生まれ変わる『もの』を指定できる権利。
特典②は、生まれ変わらないこと、を希望する権利。
颯真は、特典③の「死ぬ直前の30分を動画で観る権利」を選んで、大変な目に遭った。
「はい。①か②をお選び下さい」
颯真は迷わず答えた。
「②にする。生まれ変わらんと、ずっと天国におる」
「住み心地はいいですが、たいへん退屈ですよ」
「ええねん。俺は香帆が来るまで、ずっと待っとく」
香帆が言っていた。
『ずっと天国にいてくれたら、いつか会えるのにね』
その言葉を信じて、颯真は待つことにした。
それまで天国でノンビリすればいい。
颯真は成仏して、天国に旅立った。