「えぇ…彼女からあの映像が送られた時、威圧感というか圧迫感で動けなくなってしまいました。能力者の中でも、彼女のような特殊な存在に出会った時、私のような能力者は身動き1つ出来ない状態になってしまうんです。今も思い出しただけで鳥肌が立って震えが止まらなくなります」
「・・・・・。どうして茉奈ちゃんの命を助けるカギになるかもしれない物を彼女が持ってるんですか?」
「私にも何が何だかわかりません。でも、彼女が10年前に紺野さんのおばあちゃんに“木の箱”を渡したのは事実です」
「それなら今直ぐにでも、マサおばあちゃんの家に取りに行かなきゃ。でも…‥」
「どうしたんですか? 何か不都合な事でも?」
「マサおばあちゃんの家は岐阜県なんです。車でも片道5時間以上はかかってしまう。他の交通機関を使ったらそれ以上かかっちゃう…」
僕と葵さんは落胆した表情を隠せないまま、しばらくの間見つめ合っていた。
そして僕らは何も出来ないまま、それぞれの家路に着いた。
家に帰ってすぐに母さんにお願いしたが、理由などわかってくれるはずもなく断られた。
打つ手がなくなった…。
僕が高校生という身分で、いかに無力であるかを否応なしに思い知らされた。
どうしようもなかった…。
茉奈ちゃんを助けられないと思いたくはなかったけど、現実は無情にも僕らには味方などしてくれなかった。
それならどうして能力者の彼女は、2012年の過去にタイムスリップしてまで、あの“木の箱”を届けたのだろう…?
それに“木の箱”が本当に茉奈ちゃんを助ける物だとするならば、届けるのは10年前ではなく、1番必要としている今なんじゃないだろうか…?
その方が手っ取り早いような気がするけど…。
もっと言うなら、直接茉奈ちゃんの元に届けてしまえばいいのに…。
とにかく、わからない事ばかりで頭が痛くなってきた。
何だか疲れた…‥
眠くなってきた…‥
僕は、ベッドの上で横になり目を閉じた。
Zzz…Zzz…‥
どれくらい経っただろうか?
【大丈夫です。心配しないで下さい。マサおばあちゃんには、ちゃんと頼んでありますから】
突然、眠っている僕の頭の中に誰かが話しかけてきた。
その声で目を覚ました僕は、部屋中を見回した。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!