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深夜2時。

梨那は、ようやく眠りについた。

桜志郎から頼まれた『海外売春』のことが気になって眠れなかった。


噂には聞いている。

日本の10倍以上稼げるとか、日本人女性は人気があるとか……。

でも悪い噂や、恐い噂も、流れてくる。


桜志郎は「信頼できるエージェントに任せるから大丈夫」というが、梨那は海外旅行の経験すらない。

外国語は話せないし、一人で行くのは不安だ。


それに……、

「店がオープンしたら迎えに行くから」は本当なのか?

海外に置き去りにされたら? 捨てられたら?


いろいろ考えながら、2時過ぎに眠りに落ちた。

すると……、変な声が聞こえた。


「めしや~~」


梨那はブルッと震えて、目が覚めた。

「なに???」


「うらめしやぁ~~~」


(え? 恨めしや?)

深夜2時に聞こえる「恨めしや」の声に、梨那の身体は硬直した。

(え? なに? なんなの?)


「うらめしやぁ~~。よくも殺したな」


「え? そ、颯真?」

「そうや、オマエに殺された、颯真や」

「嘘よ」

「ホンマや。電気つけてみぃ」


梨那はリモコンで電気を点けた。

「キャアーーー!!」

空中にフワリと颯真が浮いている。


「声が大きい、近所迷惑や」

「なんで? なんで?」

「恨めしやぁ」

「私は知らない。関係ない」


梨那は耳を塞いで目を閉じた。

桜志郎から「宅配便の男と不倫しろ」といわれたが、詳しいことは聞いてない。

恨まれる覚えは無い。


「オマエを呪い殺したる」

颯真にそんな能力はない。もちろんハッタリだ。


「病死したんでしょ。私には責任も関係も無いわ」

「それが、あるんや。俺が死んだんはオマエのせいや」

「嘘よ」

「ホンマや。これから毎晩出てくるからな」


この日から颯真は、深夜2時になると梨那の部屋に現れた。

復讐の相棒は成仏できない幽霊夫です。

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