テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#推しから栄養を取りましょう
102
#snjn
不器用 ちゃん
12
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あの日決まったことも、今思えば全部アイツが仕組んでいたのかもしれない
それはGWも明けて、新しいクラスに多くの生徒が馴染めてきた頃だった。
七限のLHRの時間、どうやら今日は一ヶ月後にある体育祭関連の話をするらしい。
正直、俺は運動をすることが好きではない。ましてや人前に立って何かをするなんてことはもってのほか。
どうにか休めたりしないかな……
なんて無駄なことをボーッと考えていると、体育祭の実行委員になっていた佐野勇斗が教壇に立つ。
「もうみんな知ってると思うんだけど、今日は一ヶ月後にある体育祭の種目決めをします」
今年は高校生活最後の体育祭だということもあり、クラスの一軍なんかは随分張り切り、声をあげている。
しかし、そんなのお構いなしに実行委員は次々に説明をしていく。
「今年は、リレーが男女それぞれ6人ずつで、綱引きがーーー」
体育祭の種目が挙げられていく。
この中の一つには必ず出なくてはいけない為、どの種目ならば目立たず、早く終われるのか、それだけを考えながら話を聞く。
競技に関する説明が終わり、いよいよ各競技の出場者を決めることになった。
まずは立候補者から決め、その後は推薦になるらしい。
「じゃあ、最初にリレーから決めるんだけど……出たい人、いる?」
その言葉と同時に、教室のあちこちから手が上がった。
まあ、そうだよな。
リレーなんて、運動が得意なやつが出るものだ。俺には一生縁のない競技だと思っていた。
「男子、あと二人足りないんだけど」
実行委員の声に、手を挙げていた男子たちが顔を見合わせる。
「誰かいない?」
「いや、俺はもう他の種目出るし」
「じゃあ推薦で決めよーぜ」
クラスの一軍たちが声を上げ始めると、嫌な予感がした。
こういうとき、なぜか俺は目立つ。
もちろん、良い意味ではない。
「えーっと……」
実行委員が名簿を眺める。
そして、俺の名前のあたりでペンが止まった。
まさか、俺のことを推薦するわけない。
そう思いたかった。
けれど、佐野がペンを止めたあたりに載っている男子は、俺くらいしかいなかった。
心臓の鼓動が早まり、冷や汗が出そうになる。
「……仁人、どう?」
「……え?」
思わず顔を上げる。
すると、教室中の視線が、一斉にこっちへ向いたのが見えた。
「いや、え……俺?」
「うん。推薦なんだけど」
「いやいやいや、俺、走るの無理だって」
すぐに断ろうとした。というか断ったつもりだった。
そもそも俺は、五十メートル走ですらクラスの平均より遅い。
体育の時間だって、できるだけ目立たないようにしている。
そんな俺が、選抜リレー?
ーーーどう考えても場違いだ。
「でもさー、ほら、人数足りないし」
なんて言う佐野に続き、他のクラスメイトたちも
「一回くらい出てみたら?」
「大丈夫大丈夫、なんとかなるって」
「俺らがなんとかするからさ!」
なんて好き勝手なことを言い始める。
まずい、このままだと俺になってしまう。
そう思い、俺は助けを求めるように周りを見た。
ーーーけれど、誰も助けてくれそうにはない。むしろ、「お前がやれ」とでも言うように俺の方を見てきている。
「……じゃあ、仁人、お願いしていい?」
実行委員が確認する。
断ればいい。いや、ぜっっったいに断らなくてはいけない。「ごめん、無理」
たったそれだけの言葉を言うだけでいいのだが、クラス全員に見られているせいもあってか妙に言い出しづらかった。
「……わかった。」
口から出たのは、そんな言葉だった。
その言葉を聞いた途端、佐野はパッと笑顔になり、
「じゃあみんなも。仁人でいいよな?」
クラスメイトたちに声をかける。
すると、思っていたよりもみんな肯定的な声を上げる。
「じゃあ一人は仁人で決まり……であと男子一人!誰かいない?」
教室が再びざわつく。
それと同時に俺は小さく息を吐いた。
最悪だ。
高校最後の体育祭。
できるだけ目立たず、さっさと終わらせるつもりだったのに。
まさか、自分が選抜リレーに出ることになるなんて……
体育祭前から絶望していたこのときの俺は、まだ知らなかった。
この何気ない種目決めが、俺の高校生活の残りの一年を大きく変えることになるなんて。
そして――
あの日、俺をリレーの選手に推薦してきたアイツが、その後、俺たち五人を繋ぐことになるなんて。