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※羽鳥先輩の体調不良・吐き気(??)を伴う描写を含みます。読者様の体調や好みに合わせて、自己責任での閲覧をお願いいたします。
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今日は雷を伴う雨だ。今日に関しては未だに明けていない梅雨も重なり湿気が80%を超えていた。さっきの校内放送で部活が中止になるほどだ。
「うぅー…」
机に額を押し付けたまま、羽鳥は小さく呻いた。こめかみの奥を重い金槌でガンガンと殴られているような、強烈な痛みの波。急激に気圧が下がった雨の日は、いつもこうだ。弱みなんて見せたくないのに、ズキズキとした痛みに視界がチカチカと歪み、指先ひとつ動かすのも億劫になる。
「ちょっと羽鳥? 放送聞こえなかったの? 部活中止だってば」
トコトコと近づいてきた滝本が、上から覗き込んでくる。いつもなら「あー、聞こえてるじゃん」とチャラくはぐらかすはずの羽鳥が、全く動こうとしない。
それどころか、長い前髪の隙間から見える顔が、驚くほど真っ白だった。
「……羽鳥? 顔色悪くない?」
「……なんでも、ねぇよ……。ちょっと眠いだけ……」
強がってジト目で睨み返そうとするが、声が低く掠れていて説得力はゼロだ。
「嘘ばっかり。おでこみせてよ」
「ん……」
滝本が迷わず手を伸ばし、羽鳥の額にそっと手のひらを当てた。突然のひんやりとした感触に、羽鳥の肩がビクッと跳ね上がる。
「熱は……なさそう。あ、もしかして頭痛?大丈夫?」
__だめだ
まだいたい
締め付けられるような激痛がドクドクと頭の奥で暴れるたび、連動するように胃の底から強烈な不快感がせり上がってきた。
「……っ、く、……ぅ、」
答えを返す代わりに、羽鳥はきつく目を閉じ、自分の口元を手のひらで強く覆う。だが、必死の抵抗も虚しく、喉の奥がぐっと大きくせり上がった。 その身体はガタガタと震えている。もう、いつ限界を迎えて決壊してもおかしくない状態だった。
「……ごめん、滝本。ちょっと……まじで、喋れねぇ……っ、」
「分かった、喋らなくていいから! ……ほら、これ使いなよ!」
滝本が慌てて自分の鞄から未使用のビニール袋を引っ張り出し、広げて羽鳥の手元に押し付けた。羽鳥はガサガサと音を立てる袋を抱え込んだまま、お腹を丸めてさらに小さく縮こまる。何も喉を通らないほどの不快感と、頭をハンマーで殴られるような痛みのダブルパンチに、視界が涙でチカチカと歪んだ。限界を超えた身体の痛みに耐えかねて、羽鳥は無意識のうちに、隣にいる滝本の制服の袖をぎゅっと力任せに掴んでいた。
窓の外を叩く激しい雨の音だけが、静まり返った部室を包み込んでいる。
◆◇
──どのくらい時間が経っただろうか。脳の奥をハンマーで殴られるような激痛と猛烈な吐き気は、滝本に貰った薬のおかげか、ようやく微かな鈍痛へと変わっていた。
「……ん」
ゆっくりと顔を上げると、驚くほど体が重い。嵐が去ったあとのような猛烈なだるさと疲労感が、一気に全身に押し寄せてくる。頭の中が霧に包まれたようにボーッとして、思考がうまくまとまらない。まさに、あの激痛のあとのひどい消耗期だった。
「あ、起きた? 痛みのピークは超えたみたいね」
隣でスマホを眺めていた滝本が、気づいて顔を覗き込んできた。ふと見ると、彼女の制服の袖は、さっきまで羽鳥が強く握りしめていたせいでクシャクシャにシワが寄っている。いつもの羽鳥なら、ここで「滝本が隣にいてくれたから治っちゃった~」とでもヘラヘラ笑うところだ。だが、今の彼は頭のフィルターが完全にバカになってしまっている。
「……滝本」
「なに?」
「置いてかないで、待っててくれたんだ」
掠れた声で、思ったままの言葉がぽろりと口からこぼれ落ちる。普段のチャラい壁が取り払われた、あまりにも素真面目で無防備な同級生の視線に、今度は滝本のほうが一瞬言葉を詰まらせた。
コメント
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雨の中、羽鳥先輩の苦しそうな様子がすごくリアルで、読んでいて胸がぎゅっとなりました。特に「置いてかないで、待っててくれたんだ」という掠れた言葉が、普段チャラい彼の本音をぽろっと見せた瞬間で、とても好きです。滝本さんの優しい距離感も素敵で、ふたりの関係性がじんわり伝わってくる第1話でした。続きが気になります🌷