数日後、仕事終わり。共演者さんに挨拶をして楽屋にもどる。荷物をまとめようとスマホを手に取ると、通知が1件入っていて。
康二からの不在着信。その名前が目に入った瞬間急いで折り返しの電話をかける。
暫くコール音がなり続けて、出ないかと諦めかけた時電話が繋がった。
蓮「康二…?」
呼びかけても応えはなくて。布の擦れる音と荒い呼吸音だけが聞こえてくる。もう一度呼びかけると、数秒間を置いて吐息混じりの声が聞こえてきた。
康二「……め、め…っ」
苦しそうに、熱を帯びた声。何が起こったのかすぐに分かった。
通話を繋げたまま急いで車に乗り込む。早刻みに動く心臓の音。自分が高揚しているのを感じて。
期待と不安。2つがぐちゃぐちゃに入り混じって早鐘を打っている。最大限に飛ばしながら康二の家へと車を走らせた。
そこまで遠くないはずの道のりがひどく遠く思えて、この時だけ信号を恨めしく思った。
そんなことを考えている間に目的地に着く。何度も来ているはずなのに、いつもと違うような気がして。急いで車から降りて中へと走った。
合鍵を使って中に入ると、目眩がしそうな程に甘い香りが充満していて。理性を必死に保ちながら香りの元へと近づく。
近づく程に香りはどんどん強くなっていって、さっきまでの不安は最初から無かったかのように消えていた。
寝室に入るとより強い香りが自分を包む。ベッドの真ん中、布団が盛り上がっていて。
蓮「康二…」
声をかけると少し動いて、ゆっくりと布団が剥がれていく。
康二「……めめ…」
苦しさからか康二は涙を零していて、肌はほんのりと赤みをもっていた。
蓮「待たせて、ごめん」
康二の元へ寄って、抱きしめながら背中をさする。
康二「ごめ、ん……こんなとこ、見せたくなかってん、けど」
抱きしめた康二の身体は熱く火照っていて、苦しそうに肩で息をしている。
蓮「大丈夫だよ」
安心させたくてさすっていた背中を優しく叩くと、康二は肩を跳ね上がらせて甘い声を漏らす。
康二「…っごめ、」
気持ち悪いよな、とそう言って。苦しみからか、嫌悪感からか分からない涙を流していた。
きっと今までもそう思ってきたんだろうと思うと、早く気がついてあげられなかったという後悔が胸を締め付ける。
蓮「気持ち悪くなんてないよ」
気持ち悪い所か、むしろ可愛いと思っている自分がいて。
蓮「むしろ、興奮してる…かも」
恋人のこんな姿見て反応しない方がおかしい、と心の中で開き直る。
康二「…でも、」
それでもまだ何が言おうとするから。もう謝らないようにと、唇を塞いだ。
蓮「ごめん、もう我慢出来ない」
視覚から、嗅覚から与えられる刺激に俺の理性はもう限界で。頬を赤く染めた康二を、そっと押し倒した。