とうとう…部屋に入るんだ。
私は鍵を開けて、先に入って明かりを付けた。
『どうぞ』
スリッパを出した。
『ありがとう。お邪魔します』
本宮さん、礼儀正しいんだ。
『狭くて…びっくりしますよ』
そう言いながら、ほんの少しだけある廊下の奥のドアを開けた。
『ここがリビングと小さいですけどキッチンです』
『綺麗にしてる』
『あ、ありがとうございます』
玄関から見て左側に一つ、右側にも一つ部屋がある。
左側は客室として使ってたから、本宮さんに泊まってもらうようにした。
私は、いつも右側の部屋で寝ている。
洋服なんかは、小さいクローゼットがあって整理してしまっている。
本宮さんを部屋に案内し、
『この部屋を使って下さい。お風呂とお手洗いはキッチンの奥になります』
『ああ、いろいろ…ありがとう…』
本宮さん、少し怪訝な顔をしている?
『どうかしましたか?』
『…女性の一人暮らしにしてはすごく広いな。誰かと暮らしてたのか…?』
そんなプライベートなこと、ストレートに聞くんだ…
『…父以外の男性を部屋に入れたのは初めてです。ここは、私の両親が泊まりにきた時に寝る部屋で…なのでベッドはありませんから。布団ですみません』
『そうなのか…だったら、もしご両親が来られた時は俺はホテルに行くから』
そう言うところは優しいんだね…
身内への気遣いって何か嬉しい。
『はい…すみません。ありがとうございます。でも、本当に…ここに住むんですか?』
『ああ、ここで…恭香と暮らす。父さんにも話したけど、俺…』
『あ、あの、疲れたでしょうからお風呂入って下さい。お湯入れてきますね』
なぜか続きを聞くのが怖くて、私は急いで本宮さんに泊まってもらう部屋を出た。
また結婚とか…
そんなこと言われたら、真意もわからないし、どう受け止めればいいか…
お風呂のお湯が沸いて、本宮さんに先に入ってもらった。
そんなに長風呂じゃないのか、わりと早めに出てきた。
『えー!!』
上半身裸で下はパジャマ姿の本宮さんを見て、思わず声をあげてしまった。
『あ、あの、ちょっと困ります…裸は』
『裸じゃない。そんなこと気にするな』
本宮さんは、濡れた髪をバスタオルで拭きながらそう言った。
気にするなって言われても、気にするでしょ、普通。
細身なのに引き締まった体つき…
ジムで鍛えてるの?
本当に…目のやり場に困るよ。
『あ、あの、ビールとか飲みますか?』
『恭香は?』
『え?』
『恭香が飲むなら飲む。飲まないならお茶か水でいい』
私に合わせてくれるの?
『…私は、全く飲まないので』
『それなら俺もいい…もしかしてわざわざビール買ってくれてた?』
だから…まだ裸だから…
早く何か着て…
『全然大丈夫です。昨日、コンビニに行ったついでに買ったんで気にしないで下さい。いつか父が来たら飲むと思うので』
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