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「お前さんのアパートの家賃はいくらだね?」
お父さんがあたしに聞く
あたしは変な質問だとばかりに答える
「6万五千円・・・ですけど・・・それが何か?」
「生まれるまで俺達が援助しよう!とりあえず母さん!50万ほどこの娘に都合をつけてやってくれ 」
「ええ!明日あなたが帰るまでに用意するわ」
「そんな!いけません!そんなことをしてもらうために来たのではありません!」
「わかっているよ」
あたしはためらいがちに首を振る
「本当です!産まれるまでクレープ屋さんでは働かせてもらえる約束ですし・・・高校出てから働いているので貯金もそれなりにあります!
「まぁ!臨月まで働くなんてダメよ!」
「俺達があんたを全面的に援助しよう!とにかくお前さんは元気な子を産むことだけを考えなさい」
「俊太のことは心配いらないわ!ちゃんとさせますからね」
その夜は俊太の実家に泊った。帰りにいらないと言ったのにお母さんにお金の入った茶封筒を持たされた。実際助かった・・・お母さんは必ず俊太に連絡させると言った
帰る時は耳の障害を持っている弟の宗次郎も玄関まで見送りに来てくれた
あたしはまた会いましょうね、と彼と握手をした。案の定彼は頬を染めた、お父さんが広島駅まで車で送ってくれた
「いつでも帰って来なさい、うちはその子の家でもあるんだから」
あたしはお父さんの言葉に涙した。俊太のご両親が良い人でよかった
新幹線に乗ってあたしは大阪の自分のアパートに帰った、隣の猫を3匹飼っているキャリアウーマンのよっちゃんに、もみじ饅頭を持って行って彼の実家に行った話を小一時間ほど話して、また家に帰って来た
ふぅ~・・・・
「疲れた・・・・ 」
グレーの妊婦用のワンピースを脱いだら鏡を見る
肌色のシリコンで出来た偽装妊婦体験ベルトを、着込んでいる自分をじっと見つめる
私のおなかに大きなシリコン製の膨らんだお腹を括りつけた憐れな半裸の女が鏡に写っている
なんてあわれな姿・・・・この偽造妊婦体験ベルトは、妊婦の大変さを実感するために母親教室で色んな人が着用する物で
このお腹が膨らんだベルトは実際の妊婦のお腹の体の様に、感覚や重さが感じるウレタンフォームと鉛粒で出来ている。
あたしが装着しているのは、重さが調節できるタイプで、産婦人科の医療系インターネットサイトで購入した
重さは6.9キロ、おなかの大きさは実際妊娠8か月の大きさ、マジックテープで調節可能だ
外に行くときは必ずこの疑似妊婦ジャケットを身につけて妊婦さんを装っている
本当に妊婦さんって大変、マジックテープをはがしてベルトを外すと、一気に体が重さから解放された
あたしはふうっとため息をついた
ブラジャーとパンティだけで姿鏡の前に立つ、おへその下に醜い縦10センチの開腹手術の痕がうっすらと残っている
俊太といた時はあたしはこの傷を、彼に見せないようにした
20歳の時に子宮筋腫で貧血が酷く、医者に出来た筋腫ごと、子宮を摘出しないと私の命は保証は出来ないと言われた
医者はあたしはまだ若くて可哀想だが、自分の子供を持つことは諦めないといけないとも言った
どうして子宮に筋腫なんかが出来たのかずっと考えていた・・・バチが当たったのだ
15歳の頃・・・・思い出したくもないあのいまいましい思い出・・・・
私は15歳の頃に中絶手術を受けた、きっとあの子が私に荷した罰なのだ・・・・