テラーノベル
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朝、
スマホは鳴らなかった。
目覚ましより先に、
画面を見る。
通知は、
ない。
アプリを開く。
一番上に、
涼真の名前はない。
更新されていない。
今日も。
昨日も。
一昨日も。
画面を閉じる。
顔を洗う。
水は、
いつもと同じ温度。
鏡の中の自分は、
変わっていない。
駅までの道。
人の流れ。
車の音。
スマホが鳴るたび、
一瞬だけ、
期待する。
違う。
広告。
それだけ。
昼。
デスクに座る。
スマホを、
机の端に置く。
伏せる。
また、
ひっくり返す。
通知は、
ない。
「大丈夫?」
同僚の声。
「うん」
そう答えた。
午後。
画面を見る。
数字。
文字。
頭に入らない。
スマホを見る。
やっぱり、
ない。
“既読スルー”より、
静かだった。
帰り道。
駅のホーム。
風が吹く。
スマホを握る。
アプリを開く。
プロフィール。
写真。
もう一度、
見る。
知らない顔のはずなのに、
知っている気がする。
かっこいい。
それだけで、
少し怖い。
モテるんだろうな、
と思う。
だから、
引いたんだ。
そう考えると、
納得できた。
画面を閉じる。
歩く。
それでも、
ポケットの中で、
スマホが重い。
夜。
部屋は静か。
ベッドに座る。
画面を開く。
チャット欄。
最後のやりとりは、
少し前で止まっている。
入力欄。
何も、
打たれていない。
しばらく、
見つめる。
指を、
置く。
一文字、
打つ。
消す。
また、
打つ。
消す。
会いたい、
じゃない。
それより、
怖い。
でも。
このまま、
何も起きないままなのも、
違う気がした。
指が、
動く。
紗良
……会ってみたい
送信。
画面が、
静止する。
既読は、
まだつかない。
未読でもない。
ただ、
送ったという事実だけが、
残っている。
スマホを伏せる。
心臓の音が、
少しだけ大きい。
(無音)