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◆25話 MINAMOのCM



――あなたの生活のその次の先へ



朝のニュース番組が終わる。



画面が一瞬、静かに暗転した。




《CM》



白でも黒でもない、


淡い灰を基調にした街並み。


雑音のない朝。


ゆっくりと歩く人々の視界に、


必要な情報だけが、


さざ波のように浮かぶ。



ナレーションは落ち着いた低音。



「人は、


いつのまにか


次の“当たり前”に立っている」




カット1:通学路



薄灰ジャケットに緑Tシャツの 三森りく(24)。


水色寄りのMINAMOをかけ、


歩きながら講義資料を、


視界端で流し読む。



耳元では、


MINAMOサウンドから、


控えめな音楽。



立ち止まらない。


手も止まらない。


ただ、前に進む。




カット2:オフィス



淡緑のブラウスに、


灰のスラックスを履いた女性。



MINAMOをかけたまま、


無声でテレビ電話を開始する。



画角は、


胸元から肩あたり。


圧迫感はない。



相手は自然にうなずき、


会話は短く、


要点だけ。



ナレーション。



「話すことは、


特別な行為ではなくなった」




カット3:街角



黄緑のMINAMOをかけた親子。


子どもはキッズ用フレーム。



母親が、


軽く視線を動かすと、


横断歩道の案内が、


静かに表示される。



音はない。


でも、迷わない。




カット4:夕方の公園



淡緑トップスに、


灰スカートの 杉野いまり(20)。



ベンチに腰掛け、


MINAMOを、


“おしゃれ眼鏡”のように外して、


胸にかける。



隣には友人。


会話は続いている。



MINAMOは主張しない。


必要な時だけ、


そっと戻る。




カット5:夜の街



カフェ、駅前、商店街。


水色・緑・黄緑のMINAMOが、


街の色として、


溶け込んでいる。



誰も、


広告を見ている感覚はない。



ただ、


“使っている自分”が、


映っているだけ。



画面に文字。



あなたの生活の


その次の先へ



《MINAMO》




CM終了




テレビの前。



薄灰のパーカー姿のりくが、


少しだけ苦笑した。



「……派手だな」




ミナ坊が、


いつもの調子で返す。



『りく


これは広告です


ですが


あなたの日常も、


もう映っています』



りくは、


MINAMOをかけ直す。



画面の中と、


現実の区別が、


ほとんどつかない。



ガンガン打たれるCM。



でも、


押しつけがましくない。



なぜなら──


もう、


みんな使っているから。



MINAMOの広告は、


未来を売っていない。



今の生活そのものを、


静かに映しているだけだった。



それが、


MINAMO社会の成熟の証だった。

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