テラーノベル
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吉田には、想いを寄せる相手がいた。
想いを寄せているにもかかわらず、その気持ちをそっと心に閉じ込め鍵をかけている。
「じんと~次のオフいつ?」
屈託のない笑顔で彼_、佐野勇斗は吉田に肩を組み話しかける。
「今のとこ再来週になるけど、火曜日と木曜日以外なら…」
「えまじ?俺、金曜日珍しく休みでさ!ご飯行かねぇ!?」
佐野は吉田が言い切る前に話し出す。
「んじゃ、金曜日予定立てとくね」
そう言って佐野は、充電の少ないスマホのカレンダーに予定を入れだした。
黄色で色づけられた日にちを指さし、また屈託のない笑顔を吉田に向ける。
「ちょ、早いって。まだいいって言ってない」
「えぇ~?どうせ家でゆっくりしてるんだろ~?行こうよ~」
少し、と言うよりはだいぶ強引に話を進める佐野。
その男こそ、吉田が想いを寄せている相手だった。
吉田が意識し始めたのは3ヶ月程前。
元々はメンバーとして長い年月を共にした仲間。
ふとした時に出る優しさや、最年長としての振る舞い方や頼りがいのある所、あげるとしたらキリがないが、今までの蓄積が積もりに積もり、吉田は心に熱いモヤモヤを抱き始めた。
勿論最初は吉田はただの勘違いだ、とそう思っていた時期もあった。
しかし、手が触れる瞬間や肩を並べた時。
ライブが上手くいった時の喜びのハグの時。
どれもこれも佐野の時だけ、心臓がうるさかった。
いつの間にか、佐野が他の男と楽しそうに話している時、吉田はただじっとその2人を眺めるようになった。
それが嫉妬という感情なのかは吉田にはわかっていないが、慣れてない感情に戸惑いつつも良くは思っていないようだった。
そして今に至り、吉田はこれが恋心だと自覚した。
『…男が好き、しかもメンバー同士…さすがに無理だよな』
半分以上諦めている吉田には告白するような勇気もなく。
ただただいつもの日々を過ごしていく。
「……わかったよ。予定、空けておく」
「まじ!ありがとう!じゃあ、お店とか色々決めてまた改めて連絡するわ!」
小さくも激しく手を振る佐野に、そっと静かに振り返す。
『この気持ちは、墓場まで持っていこう』
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