テラーノベル
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朝の教室。
いつもと同じ机。
いつもと同じ空気。
でも、違う。
おらふくんの中に、
昨夜の言葉が、まだ残っている。
――一緒にいる。
――弱いままで。
おんりーは、窓側の席に座っている。
いつも通りの顔。
でも、ほんの少しだけ、疲れて見えた。
それを見た瞬間、
胸の奥で、何かが決まった。
休み時間。
背後で、ひそひそ声。
「まだ一緒なんだ」
「懲りねーな」
おらふくんの肩が、びくっと揺れる。
――今までなら、ここで終わってた。
聞こえないふり。
気づかないふり。
でも。
視線の先で、
おんりーの指が、わずかに震えた。
それを見てしまった。
「……やめて」
声が、出た。
自分でも、驚くほど、はっきり。
教室が、一瞬、静まる。
「は?」
振り返る視線。
笑い声が、起きそうになる。
でも、おらふくんは、目を逸らさなかった。
心臓が、耳の奥で鳴る。
「……聞こえてる」
喉が、熱い。
「……そういうの」
一拍。
「……やめてって、言ってる」
空気が、変わる。
強くない。
怒鳴ってもいない。
ただ、
逃げなかった声。
「調子乗んなよ」
誰かが言う。
足が、一歩近づく。
その瞬間。
おらふくんは、深く息を吸った。
「……先生、呼びます」
震えは、止まらない。
でも、言葉は、崩れなかった。
「……もう、黙らない」
周囲が、ざわつく。
廊下を歩く先生の足音が、近づいてくる。
「……ちっ」
舌打ち。
それ以上、何も起きなかった。
昼。
裏じゃなく、
今日は、普通の教室。
おんりーが、ゆっくり近づいてくる。
「……さっき」
低い声。
「……ありがとう」
おらふくんは、首を振る。
「……助けた」
言ってから、少し照れる。
「……助けたかった」
おんりーの目が、少し潤む。
「……声、出てた」
「……うん」
小さく、でも確かに。
「……怖かったけど」
「……一人じゃなかったから」
おんりーは、何も言わず、
そっと肩に触れる。
それだけで、十分だった。
放課後。
準備室。
二人並んで、窓を開ける。
「……なあ」
おんりーが言う。
「助けるってさ」
一拍。
「殴り返すことじゃないんだな」
おらふくんは、少し考えてから、うなずく。
「……逃げないこと」
「……声、消さないこと」
おんりーは、笑った。
「……強くなったな」
首を振る。
「……違う」
視線を合わせて。
「……一緒になった」
その日、
世界は、劇的には変わらなかった。
でも。
声を出した事実だけが、確かに残った。
もう、戻れない場所まで、進んだ。
おらふくんは、
初めて“守る側”として、そこに立っていた。
それから、放課後。
教室のドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
「……二人とも、座って」
担任の先生は、いつもより低い声だった。
怒鳴らない。責めない。
ただ、逃がさない声。
おらふくんは椅子に座りながら、指先を握りしめる。
おんりーは横で、何も言わず、背筋を伸ばしていた。
「今朝のこと、聞いた」
一拍。
「それから――前からのことも」
空気が、重くなる。
「“ふざけ”で済む話じゃない。
もう、ここまで来てる」
先生は視線を落とし、机の上のメモを見る。
そこには、日付と、名前と、短い記録。
「今日、声を出したのは……正しい判断だった」
おらふくんの胸が、きゅっと縮む。
「怖かっただろ」
先生は、はっきりそう言った。
「それでも、言った。
それは、助けを求める力だ」
おらふくんは、うつむいたまま、うなずく。
「これからの話をする」
先生は続ける。
「まず、関係してる生徒全員を個別に呼ぶ。
席も、班も、行動範囲も変える」
おんりーが、少しだけ目を見開く。
「監視じゃない。保護だ」
はっきりと。
「必要なら、学年主任、管理職、保護者も入る」
その言葉に、教室の空気が変わった。
“見て見ぬふり”の世界が、終わりかけている音。
「おらふ」
名前を呼ばれて、びくっとする。
「無理しなくていい。
今日は、もう帰っていい」
一瞬、迷ってから、先生は言葉を選ぶ。
「……一人で抱える段階じゃない」
おらふくんの喉が、詰まる。
「……はい」
声は小さい。でも、消えなかった。
廊下。
夕方の光が、床に長く伸びている。
「……先生、本気だな」
おんりーが、ぽつり。
「……うん」
おらふくんは、歩きながら答える。
「……怖い?」
「……ちょっと」
正直な言葉。
でも。
「……でも」
一拍。
「……悲しいままより、いい」
おんりーは、ゆっくりうなずいた。
「……俺も」
翌日。
教室の空気は、前と同じじゃなかった。
名前が呼ばれる。
人が、呼び出される。
廊下の向こうで、低い声が続く。
誰かの笑い声が、消えた。
完全じゃない。
まだ、視線は刺さる。
でも。
放っておかれなくなった。
それだけで、世界は、ほんの少し違って見えた。
昼休み。
裏じゃなく、
今日は、普通の教室。
おんりーが言う。
「……悲しさ、なくなるまで」
おらふくんは、窓の外を見て、答える。
「……時間、かかるね」
「……うん」
でも。
「……一人じゃない」
その言葉は、
もう、祈りじゃなかった。
現実になり始めていた。
コメント
1件
うわぁ…(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) なんかすごいさぁ、かんどうする、、 つよくなったなはずるいですよぉ…