テラーノベル
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残された4人は、しばらく動くことができなかった。
やがて最初に口を開いたのは茜だった。
「ど、ど、どうしよう!」
焔垂は拳を握り締めたまま、すぐに判断を下す。
「とりあえず編集部に戻ってみっか?
馬場さんたち、まだ居るはずだし」
朝陽もすぐに頷く。
「そうですね!」
さくらも焦りを隠せない様子で言った。
「警察にも通報しなきゃだよね」
「と、とりあえず編集部行こう!」
焔垂の短い返事を合図に、4人は編集部目指して一斉に駆け出した。
◇ ◇ ◇
話は現在へと戻る。
編集部には重苦しい沈黙が流れていた。
誰もが信愛を乗せたワンボックスカーの行方を思い浮かべ、焦燥感を募らせている。
最初に口を開いたのは龍河だった。
「なんで天縁教団が白縫さんを拉致るんだ?」
焔垂は悔しそうに首を横へ振る。
「分かりません」
一度言葉を切り、思い返すように続けた。
「ただ、ヤツらは白縫さんが必要だと
そう言ってました」
龍河は眉間に深い皺を寄せる。
「必要って・・・どういう意味だよ」
誰にも答えは出ない。
沈黙を破るように龍河が口を開いた。
「と、とりあえず警察に通報を──」
その瞬間。
「いや、待つんだ」
忍の低く落ち着いた声が部屋に響く。
突然の制止に茜は目を丸くする。
「え?」
龍河も驚いたように振り返る。
「俺も警察への通報は待った方が良いと思う」
朝陽は思わず声を荒らげた。
「何でですか!?先輩は連れ去られたんですよ!?」
龍河は静かに頷き、冷静な口調で説明を始める。
「こういう連れ去りの場合
警察に通報されたことを知った犯人が
逆上して逆に危険な状況になる場合があるんだよ」
部屋の空気がさらに重くなる。
「それに今はまだ、何で教団が白縫さんを
連れ去ったのかその理由も分からない」
焔垂はゆっくりと頷く。
「た、確かにそうですね」
龍河は確認するように問いかけた。
「教団の奴らは白縫さんに危害は
加えないって言ってたんだよな?」
「は、はい・・・」
その返事を聞いた途端、さくらが一歩前へ出た。
瞳には涙が浮かんでいる。
「あんな奴らの言うこと信用するんですか?」
龍河は黙ってさくらを見つめる。
さくらは感情を抑えきれなかった。
「馬場さんは信愛が友達じゃないから
だからそんな事簡単に言えるんでしょ!?」
茜が小さく呟く。
「さくら・・・」
しかし、さくらは止まらなかった。
涙を頬に伝わせながら龍河へ訴えかける。
「もし自分の大切な友達が信愛と同じ
状況だったらそんな事言えないでしょ!?」
部屋は静まり返る。
誰も言葉を返せない。
さくらの悲痛な叫びだけが、重苦しい空気の中にいつまでも響いていた。
焔垂は唇を噛み締め、小さく呟く。
「花牟礼・・・」
すると龍河は静かに息を吸い込み、皆を見渡した。
「正直に言うよ──」
その一言だけで、部屋の空気が張り詰める。
龍河はまっすぐさくらを見つめた。
「俺の友達が今の白縫さんと同じ状況だったら
たぶん俺が一番最初に警察に通報してる」
さくらは少しだけ安堵したように頷く。
「ほら・・・やっぱり・・・結局
馬場さんにとって信愛は──」
しかし龍河は首を横に振った。
「でも、俺が通報したせいで
友達が帰って来なかったりしたら」
拳を強く握り締める。
「俺は自分を一生許せないと思うし
死ぬまでその後悔を抱えて生きてくと思う」
その声には、これまでの軽い調子は一切なかった。
「だから今、判断を間違える訳にはいかないんだ」
焔垂は思わず龍河の名を呼ぶ。
「馬場さん・・・」
さくらも何も言えず、唇を噛み締める。
龍河は静かに続けた。
「最悪の事態を招く可能性がゼロではない以上
今すぐの通報は控えるべきだと思う」
誰も反論できなかった。
龍河はゆっくりと頭を下げる。
「だから辛いかもしれないけど
どうか理解してほしい・・この通りだ」
深々と頭を下げる龍河の姿を見て、さくらは震える声で答えた。
「わ、分かりました・・・」
その様子を見届けた忍が口を開く。
「なら、とりあえず親御さんへの連絡だ」
皆の視線が集まる。
「この中に白縫さんのお母さんの
連絡先を知ってる子はいるかな?」
焔垂が申し訳なさそうに手を挙げる。
「連絡先は知りませんけど住所なら知ってます」
龍河はすぐに頷いた。
「なら、すぐに向かおう」
続けて思い出したように言う。
「下に取材用のハイエースがある
それなら全員乗れるから」
「お願いします」
焔垂の返事を合図に、一同は慌ただしく編集部を飛び出した。
やがて龍河が運転席に乗り込み、全員を乗せた取材用のハイエースはエンジン音を響かせながら走り出す。
向かう先は白縫家。
コメント
1件
第247話、読み終えたよ…!いやもう、めちゃくちゃ重い空気やったね。さくらの「友達じゃないから簡単に言えるんでしょ」って叫び、めっちゃ刺さったわ。龍河の冷静な判断も分かるけど、感情が先に立つ気持ちも痛いほど伝わってきて、どっちも正しいって思わせるこのバランスが上手いなって。ハイエースで白縫家に向かう展開、次が気になりすぎる🔥
#普通
野々さくら
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805
44
ありあ
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