「お妃様…頑張ってください…あと少しです」
「ぎゃ…おんぎゃー…ぎゃー…」
辺り一面赤ん坊の泣き声が響き渡る
「魔王様…生まれましたよ!元気な女の子です」
「妃は…サイネリアは無事か」
「はい!お二方無事です」
「よかった」
「陛下…」
「無事で何よりだ。ありがとう」
「陛下泣かないでください。それより…この子の名前を決めないと」
「そうだな。サイネリアは考えているのか」
「はい…アヤメなんてどうでしょう」
「アヤメ…それはサイネリアが好きな花の名前か」
「そうです…花言葉は希望。わたくしと同じく花の名前からとりました」
「ぴったりだな」
この場は、魔王城とは思えないほどの幸福に包まれていた
大学生だった私は現在アヤメになり3歳だ。どうやら転生してすぐに意識がはっきりする訳では無いようだ。モヤがかかったような感じでゆっくりと取り戻していき先ほどはっきりと思い出した。私が転生して一番に目にしたのは父親の変顔だった。
「いないいない…ばぁーー」
「…キャッキャッ」
とりあえず、喜んでおく。さっきまで笑っていたのにいきなり、笑わなくなると相手からしたら困ると思うので
それから過ごしていくうちに、多くのことがわかってきた。やはり私は、魔王の娘に転生したようだ。まぁ、姫様ポジションだ
(だが…まさか魔王の娘だとは)
「あーばあ…うー」
「アヤメどうしたの…よしよし」
(大好き!!)
好き過ぎて悶えそう。母様は、ものすごく美人だ。笑顔が眩しくて溶けてしまいそう…
母は、白い髪を持ち紫目でほんわかしている。父は、黒い髪を持ち青目で頭には紫色の角がある。家族の前ではデレデレだが仕事ではキリッとしている。まぁ、私もプライベートと外ではON/OFFをするタイプだった。鏡で確認したところ私は、両親の特徴それぞれをとった黒髪で紫目だった。角は、ないようだ。アヤメ…私の新しい名前まるで日本名のようだ。懐かしみを感じる。
「姫様!今日はお絵描きをしましょう」
両親が仕事をしている間は、乳母が面倒をみてくれる。乳母であるラナは、魔族だとはっきりと分かる。頭に垂れ下がるような角が生えてある。オレンジ色で綺麗だ
「りゃな」
「まぁ、姫様今!ラナって私の名前を呼びましたよね!」
ぎゅうー
ラナは、私を抱きしめた
(思った以上に赤ん坊だと喋りにくいな)
だが、最初の頃よりはマシになった。もう、あばぁ…ぶぁとかしか喋れなかった。
(お絵描きは、得意だ。まずは、動物を…)
「あら、これは何かしら」
「う…」
全然書けない…色えんぴつを上手く握ることができない。なんとか握れても上手く書けない…
なぜ、ちっちゃい子が描く絵はぐちゃーとなりそれでも上手く描けたと思うのかよくわかった。もう、やめようかな
ガックシ
「姫様よかったら、魔王様と魔妃様の絵をお描きになりませんか」
(二人の絵)
「あい」
よし、私にできることをしよう
「でけた」
「すごいですわ、姫様。上手ですね」
えっへん
私なりの自信作だ。そうだ
「りゃな!とうへいく」
「魔王様のところへですか。そうですねせっかくだから見てもらいたいですね」
私は、ハイハイで扉の前に猛ダッシュ。元陸上部なめんなよ
「姫様お待ち下さい。よいしょ…私もお供いたします」
通り道いろんな人(?)が頭を下げていったり、話しかけていった。Theお姫様って感じがする。
コンコン
「魔王様、姫様が会いにきました」
「入れ」
ガッチャ
「とう、かあ」
「アヤメどうした」
執務室には、両親がおり一緒に仕事の書類を片付けていた
「え、あげる」
「姫様が魔王様と魔妃様の絵をお描きになったのでそれを見せに来ました」
「そうなの…アヤメ、絵を見せて」
「あい」
「まぁ、上手ね」
「そうだな」
よしよし
二人は、私の頭を撫でてくれた。あったかい
「アヤメ…父様のとこにおいで」
「あい」
クッションを引いて父様の膝に座った。うむ、背中あたりがゴツゴツしている。
見て思ったが、父様はハンコを押す作業。母様は、書類に書いていく作業。どう見ても魔王の仕事とは思えない。こっともう、殺伐とした仕事をしているのかと思った。
(文字………分かる!)
なんて書いてあるのだろうと覗いてみたが、見たことの無い文字で分からないはずなのにめちゃくちゃ分かる。
は!
もしかして、神様からの力かな。
(よっしゃー!!試しに…なになに)
城の現在事情、騎士団の予算案は…無視した。税金、討伐、5歳の誕生日パーティー、開発部の案…ん?パーティー?…パーティー!!貴族みたい
(憧れだー)
魔王城でも、そんなことするんだ。てか、まだその件については考えるの早くない?
「おー」
「ん?アヤメなんか気になる事があるのか」
「楽しそうね…アヤメ、わたくしの元にも来てほしいな」
「だめだ」
「ケチね…アヤメがいたら嬉しすぎて仕事が捗らないんじゃないの」
(母様…拗ねてて可愛い)
「そ…そんなことない」
「どうかしら…さっきからニヤついてるわよ」
「うっ…」
あっ、父様照れてる
「キャッ…キャッ」
「うふふ」
「フッ」
この和やかさがずっと続いてほしいな
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