優斗)ドゥワー、こん中に入るん?俺たち。
蓮)はい。
目の前にしていたのは、既に廃れていると目に見えてわかるほどの、苔やツタが覆い被さっているビルであった。
何年も放置されている草木が生い茂っているが、かといって歩けない程でもない。
一つだけ、用事のある人間が出入りしていることが分かる、細い道ができていたのだ。
優斗)え、これ、、、そのまんま入ってって大丈夫、?
蓮)別に大丈夫でしょ。
心霊スポットに入るかのようなテンションでビルに立ち向かう蓮の背中に対して、特に頼もしいと思うわけでもなく、心配だけが残っていた。
1Fのフロアタイルに踵をつける。ひび割れやタイルがあちこちに散乱し、床に散らばったガラスは煌びやかな輝きを反射していた。
決して安全と言い難い建物内で、もしエネミーに遭ってしまったら、、、
はたして俺は戦う以前に逃れるだろうか?
兇器を向けられた時に、「56されるかもしれない、、、。」という恐怖感が、どれほど身震いするものであるかを、まだ知らない。それに、その恐怖感は、とても言葉では言い表わすことは出来ないだろう。
優斗)見た感じ、廃病院っぽいな。
蓮)そうですね、見た感じだけは。
病棟が彼方此方にあった。
蓮)そういえば、実はココで障害のある人を集めて、臓器販売をしていたそう。
優斗)ほえー。
歪な雰囲気を醸し出す部屋に意識が行き、弱々しい蛍光灯に照らされながら、蓮の話を聞く。
小さな音にも、敏感に反応するほどに神経が尖っている。
優斗)え、で、俺たち何すりゃいいん、?
蓮)確か、、、。カルテを集める、的な〜?
優斗)へ〜ぇ
診察室では、ベットフレームが錆び脆くなっている。モニターもキーボードも、ペンも紙も
まるで、突然誰もが予想だにしない出来事により、関係者が一斉に絶ったような。
、、、?
優斗)蓮。これはなんだ?
蓮)?
机の上に、カルテらしき書類が山積みに乗せられていた、一番表の紙を手に取る。
蓮)これは、、、。
ナンバー1700?
優斗)ドゥア!センナナヒャク!
蓮)、、、。
優斗)ごめんつい、、、1700っていったらあの有名ネタ じゃん。
なんとも気まずい空気だ。流石に蓮もネタは知ってるだろう。
、、、ドイツに滞在してたから知らないとか言わないよな、?
蓮)蛙化しそうだった。
優斗)wwww
知ってたらしい。
随分と和やかとなった。だが、この場にいる以上気を緩めてはならない。それは、いつ何処でどうなるかまだ未知である他、優斗にとっては最初の“仕事”となる。
蓮)この紙は、おそらく内臓処理HACCPですね。
優斗)なんだそれは、進研ゼミでまだ習ってないぞ。
蓮)まぁ、内臓の売買するためのものでしょう。執刀医が介入しているからね。
優斗)シットウイ?何それ。
蓮)気しない方がいいですよ。
その紙には、患者である人物名や症状等が書かれている。
優斗)AF?
蓮)心房細動だ。
優斗)よく知ってるなぁ。もしかして医師目指してた?
蓮)いや、たまたまです。
優斗)またまた〜。
優斗は幾つかの手がかりを見つけはしたが、それに満足しなかった。その孰れもが、考え方や見る角度によって、妥当であるようにも思えるし無理があるようにも思えた。
それだけ見えざる組織の動きから、定まった方程式が掴み難いのであった。
これほどのビルを表に設立できるほどの権力と財力を持っているはずだろう。見え隠れしている人物名も、かなり多様性で、もはや中心人物を絞り込める段階などなかった。
うっかり絞り込み方を間違って攻めると、真に据えるべき標的を見失ってしまう可能性が大きい。
ともかくも、優斗も蓮は、この場を去るまでは異常事態に直面することなく事を終えたいと思った。
が、そんなことは無かろう?
この作品、、、否、この物語で優斗が主人公であり、またアクション系であるこのシーンを、穏便に終わらせてくハズもない。
そして時間が、流れるように過ぎてゆく。
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