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「うわー!見て!!あれ虹だよ虹!! 」
はしゃぐ絵斗に、俺は微笑みながら「そうだな。」と言葉を返した。
───今のオレたちは散歩していて、ある場所に遊びに来ていた。もうすでにこいつとは一回だけ来たことのある場所で、正直今回も楽しみだった。
───え?天乃の家での愚痴の話?………あぁ、昔の話か。
オレは天乃から呪いと称する約束をかけられた後、親から虐待されてるんだと警察に通報した。その後オレはあの家で一人暮らしするわけにも行かず天乃の家に住まわせてもらった。天乃はすでに一人暮らしだから生活人が増えるのは嬉しいと答えてくれてこちらも嬉しかった。
家賃も、食費も、電気代も…全て割り勘で。
───そんな軟弱者だったオレにかけられた呪いは”無理しない”ということだった。
「興味なさそー。」
「いやいや、んなことないって〜。」
当時は意味がわからなかったけど、今はその約束をずっと守っている。もちろんこの約束はオレだけじゃなく天乃にも適用。
「信じられんなぁ。」
「はいはい。もう着くよ〜」
そう言って、俺たちは目的地に到着した。
葉っぱの隙間から差す太陽光は酷く明るく、輝かしく、美しい。こういうのが木漏れ日っていうんだろうな。…子供の時には、そんなの全然気にしてなかったな。
「うっわー!全部違う花になっちゃってんじゃん!!」
「まぁ、そりゃいつかは枯れるし変わるんじゃねーの?」
───俺たちが来ていた場所は、俺たちの出会いの場であるあの花畑だった。黄色と青で咲き誇っていたフリージアとカーネーションの花は、一輪の姿も見せておらず、全てが一色の花で埋まっていた。
「でも綺麗だね〜!ねね、この花はなんていうの?」
紫に染まる花畑を歩き回ってから天乃はオレの目線に合わせて大声で話しかける。オレは少し呆れながらも、楽しいと思ってしまっているのは顔に出ているであろう。
「ペチュニアだよ。」
「へー、あんま聞かないね!!」
このうっすい感想しか出ないのも、こいつだとわかっている。
「…でもなんか、子供の頃は花畑がデカく感じたのに、今じゃほんと花壇って感じ!!」
「いやまぁそんなデカくても困るだろ。」
オレが突っ込むと、天乃は笑いだす。…でも、天乃の言っていることにはすごく共感できる。子供の頃に見えてたこの景色は、今見ればすごく質素なものに見えて。それでも思い出が詰まっているのだ。この場所をいつまでも見ていたい。
「ね、らっだぁ。」
「ん?どしたーぺいんと。」
“ある名”で呼びながら、オレ達は見つめ合う。
「今日しにがみの家寄ってかね?今クロノアさんとトラゾーもいるからさ!!」
「お、いいこと思いつくじゃん。じゃあなんかそこの店でびっくりするようなもん買ってこうぜ。」
絵斗───・・・いや、ぺいんとは大笑いしながらノリノリで近くの店に足を進ませた。それにオレ───らっだぁも並んで歩く。
この時間が永遠と続けばいいのに…なんて、少し豪華な願いすぎる。それでも…失いたくない。……これも豪華かな?
「おっかしいな、オレって。」
ポツリと呟いた言葉は相手に聞こえていて、 「ん?」と不思議そうな顔でこちらを見つめた。
「いや…ぺいんと達とずっと一緒にいたいって思うのは多分豪華な願いなんだろうなって思ってさ。」
…いや、なんだか気持ち悪い言葉を言っているような気がする。いや本音なんだよ?でもなんか言ってることは気持ち悪くて……っ、あーもう!!
「ま、まぁいいやん!はよ店行こうぜ」
オレが慌てながらそう口にすると、ぺいんとは「いや」と言ってオレの足を止めた。
「豪華ではある。豪華じゃないって思わねーもん。オレたちの出会いは奇跡だし。だから豪華ではある。あるけど…」
ぺいんとは少し恥ずかしがりながらも、答えた。
「そう願うのは、お前が確実に”今が幸せだ”って思ってるからだよ。 」
「ね?」と笑顔で言うぺいんとに、オレは頷いた。
───ぺいんとにはいっつも負けちゃう。
それでも、昔のように嫌になったりはしない。それがこいつのいいところであるし、オレにもいいところはあるから。いいところがない人間は、この世にいないんだ。
悪い面しか見えていない人間にも、いいところの一つはある。必ず。どんなに小さなことでもあるはずだから。
…まぁ、だからと言って悪いことをしていい理由にさえもなりやしないが。
───でもオレは、そう認めてくれる仲間ができたから、心配ないんだ。