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豪は少し腕を緩め、奈美を眼差しで包み込む
アーモンドアイは、彼を見つめ返したまま。
吸い込まれそうな黒曜石のような瞳には、豪が映し出され、刹那、時が凪いだように感じた。
なあ、奈美。
俺は君を傷つけ、苦しませ、泣かせてしまったが、君の姿だけを、これから先も見続けていたいんだ。
出会ったきっかけは不純だが、そんな事は関係ない。
俺に対して疑心暗鬼になったり、マイナスな感情をたくさん抱えているかもしれない。
それでも俺は君が…………奈美が好きなんだ……。
自分の想いとは裏腹に、好きな女を、心身ともに打ちのめしてしまった事が情けなくて、顔がクシャリと歪みそうになる。
「奈美ちゃんを泣かせてしまった……。すまない……」
豪は、奈美を強く抱き寄せ、柔らかな髪に唇を落とす。
「本当に…………すまなかった……」
消え入りそうな声音で、もう一度謝罪すると、彼女は、縋るように彼の身体へもたれ掛かり、胸に顔を埋めた。
奈美が流す雫の跡が、彼のTシャツに滲み、冷んやりとした感覚が、豪の肌に伝わっていく。
彼女の仕草に、彼の中で愛おしさが震えた。
と同時に、豪は自分の視界が、微かに濡れている事に気付く。
初めて女の事で泣きそうになっている自分に、やるせなさを感じてしまった。
(こんなに好きなのに…………奈美を泣かせる俺は……ホントにバカな男だよな……)
もう手放さないという想いを込め、豪は一晩中、奈美を抱きしめていた。