※必ず『注意と設定』を見てください。
あれから数日が経った。あいつのことが気になりながらも探索はせず、いつも通りの日々が過ぎていった。珍しく授業を受けた後の昼休み、屋上に行こうと廊下を歩いていると、明らかに素行の悪そうな奴らに絡まれている涼太がいた。思わず近くにあった空き教室に隠れて様子を伺う。
「おい、お前さっきのテスト俺のやつカンニングしただろ?」
「いや、してない…です…」
「嘘つけっ!!」
「ひっ…」
「お前なんかがそんな高得点取れるわけねぇだろ!?」
「…っ、でも、カンニングは…」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよっ!」
「…っぅ…」
「お?泣いてんの?だせぇーw」
「ほんとだw女子みてぇww」
…典型的ないじめだな。馬鹿みてぇ。ってか涼太泣いてんの?そう思いちらっと現場を見ると、涼太は壁に押さえつけられながらボロボロと泣いていた。頭にかっと血が上り、そいつらのところに向かった。
「おい。」
「え…渡辺、さん…?」
「あ?誰だてめぇ?」
「俺が誰かなんてどうでもいいだろ?そいつ離せよ。」
「はぁ?てめぇ誰に向かって口聞いてんだよ!?」
「…っ」
「渡辺さん!」
殴られた。そう理解するのに数秒はかかった。
「はっ!いじめられっ子助けてヒーロー気取りってか?殴られてんのにウケるw」
「…ウケんのはお前らだろ?」
「はぁ?」
呆気にとられてるそいつらの顔を見て、俺は口元に付いた血を拭いニヤッと笑った。
「今状況的に不利なのはどっちだよ。泣いてる涼太と頬が殴られて赤くなってる俺と無傷なお前ら。先生に言って信じて貰えるのはどっちだろうな?」
「…っ、卑怯だぞお前!」
「…はぁ、卑怯なのはどっちだよ。さっきから俺聞いてたけどさ、お前らがしてるのって、テストでいい点取ってるこいつがムカついて八つ当たりってところだろ?卑怯どころか人間性的にアウトだと思うんだけど。どうすんの?俺今から涼太連れて職員室行ってチクることも可能なんだけど。そしたらどうなるんだろうな?退学…とまではいかなくとも怪我人出てんだし休学くらいにはなるんじゃね?」
「…っ」
「…チクられたくなければとっとと失せろっ!」
そう言うと、奴らは舌打ちをしてその場から逃げだした。思わずため息をつくと、壁に押さえつけられていた涼太がずるずると座り込んだ。
「おい、大丈夫か?」
「…っ、すみません、すみませっ…」
「…何が?」
「頬、殴られたの、俺のせい、でっ…」
「…お前のせいじゃねぇよ。」
「でもっ…巻き込まれるっ…」
「落ち着け。深呼吸しろ。」
「ぅ、っ…すぅ…はぁ…」
「そ。上手。」
暫くすると涼太の呼吸も整ってきた。
「…すみません、もう大丈夫です。」
「…お前ちょっとこい。」
「え、渡辺さん、保健室行かないと…」
「俺のことはいーから。」
あわあわしている涼太を引っ張って来たのは屋上。
「…よし、じゃあ話してもらうぞ。」
「…」
「お前、いつからあーなってんの?」
「…入学して、暫く経ってから…」
「…へぇ、よく耐えたな。」
「…俺、体が弱くて。」
「…うん。」
「…学校も休むことが多くて。」
「…」
「親も…いないんです。だから1人暮しです。学費は奨学金を貰ってるんですが…」
「…だからだと思います。俺は弱々しいから抵抗しないだろうってあの人たちは思ってるんだと思います。」
「…」
「…渡辺さんと初めて会った日はちょうど少し体調が良くなくて。保健室行ったんですけど、先生がいなかったから…教室戻るのも気まずかったので屋上に来てたんです。」
「そう。」
「…はい。」
「…今は?」
「え?」
「体調、今は大丈夫なの?」
「あ…はい。大丈夫です。」
「…なら、いい。」
「…」
「携帯持ってる?」
「…え?はい、持ってます。」
「じゃあ連絡先交換しよ。」
「…へ?」
「何?嫌?」
「いや、全然、嫌とかじゃなくて…」
「何?」
「…俺なんかに、いいのかな、って…」
「…俺なんかじゃなくて、俺がしたいって言ってんだからいいの。」
「あ、はい…」
「後、同学年なんだから敬語は禁止。」
「え!?」
「分かった?」
「はい、じゃなくて…うん。」
「よし。」
こうして俺らは連絡先を交換した。
「体調悪くなったりまたいじめられたりしたら呼べよ。」
「えっ、でも…」
「でもじゃねぇ。俺基本的に授業サボってるからいいの。だから遠慮なしに連絡しろ。いいな?」
「…うん。ありがとう渡辺さん。」
「…渡辺さんって呼ぶのも禁止な。」
「え!?」
「むず痒くて何か嫌なんだよ。」
「じゃあ何で呼んだらいい?」
「俺涼太って呼ぶし、翔太でいいよ。」
「分かった、ありがと翔太。」
「よし。じゃあまず職員室行くか。」
「えっ、あの人たちに言ったの冗談じゃなかったの?」
「当たり前だろ。少なくとも涼太泣かせて俺怪我させてんだからほっとくわけがねぇ。」
「そう、なの…」
「そう。ほら行くぞ。」
そう言って俺は涼太を引っ張って職員室に向かった。
コメント
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楽しみです☺️