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第67話:大豆パティで作る、奇跡の健康ハンバーガー〜ソイミートと、輝くゲーミングA5和牛〜
二月下旬。十勝の厳しい冬はまだまだ続くが、限界集落の古民家は今日もシロの『適温25度の絶対防壁』によって、春を通り越して初夏のような平和な空気に包まれていた。
「ふぅ……。最近、ちょっと胃が重いな」
俺はこたつの中で腹をさすりながら、深いため息をついた。
「お兄さん、ここ数日ずっと美味しいものばかり食べてましたからね。村長さんからもらったカボチャのほうとう鍋に、ダイヤモンド白菜漬けでの雪見酒……完全にカロリーオーバーですよ」
小春ちゃんが苦笑しながら、熱いほうじ茶を淹れてくれる。
ブラック企業時代、ストレスで胃に穴を開けかけ、毎日スーパーの見切り品のモヤシで命を繋いでいた俺にとって、今の食生活は間違いなく「貴族」のそれである。
だが、四十歳という年齢は残酷だ。どれだけ環境が快適でも、社畜時代に酷使した内臓のスペックは確実に低下している。
「というわけで、今日は胃腸を休ませるための『超ヘルシー健康食』を作ることにした。今日の配信のメインコンテンツだ」
俺は立ち上がり、ジンバルにセットしたスマホをキッチンへと向けた。
同接250万人のリスナーが見守る中、俺がまな板の上にドンッと置いたのは、スーパーで買ってきた茶色い乾燥フレークのような塊だった。
「世界中の皆さま、こんにちは。今日はこの『大豆ミート(ソイミート)』を使って、超低脂質・高タンパクな健康ハンバーガーを作ります。バンズも小麦粉ではなく、俺特製の『玄米バンズ』を使用する徹底ぶりです」
『大豆ミートに玄米か! 意識高い系のおっさんww』
『限界社畜からオーガニック系YouTuberへの華麗なる転身』
『でも大豆ミートって、やっぱり肉のガツンとくる旨味はないんだよなー』
『パサパサしてて豆腐ハンバーグっぽくなりそう』
チャット欄の反応は、期待半分、疑念半分といったところだ。
確かに、大豆由来の代替肉は健康には良いが、本物の牛肉が持つあの「暴力的な動物性脂肪の旨味」を再現するのは難しい。
「フッ、心配するな。動物(キツネたち)にも安全なようにネギ類や香辛料は一切使わず、代わりに昆布ダシと椎茸粉末で天然の旨味をブーストしてある。あとは俺の完璧な温度管理で焼き上げれば、本物の肉に肉薄するパティになるはずだ」
俺は水で戻した大豆ミートに調味料を練り込み、手際よくパティの形に成形して、スイッチを入れたIHヒーターの上のフライパンへと投入した。
ジューゥゥゥッ!
小気味良い音と共に、ハンバーグの焼ける香ばしい匂いがキッチンに広がる。
「わぁ! お兄さん、すごくいい匂いです! これなら大豆って言われても気づかないかも!」
小春ちゃんが目を輝かせる。
だが、フライパンの前でトングを握る俺は、少しだけ眉をひそめていた。
(……いや、匂いはいいが、やっぱり『脂』が足りない。赤身肉のようなパサつき感はどうしても誤魔化しきれないか……)
俺がそんな限界社畜特有のシビアな分析をしていた、その時だった。
『ミャウ』
それまでルーターの上で液状化していた神獣シロが、トコトコとキッチンへと歩いてきたのだ。
「あっ、シロちゃん! 火のそばは危ないよ!」
小春ちゃんが慌てて制止しようとするが、シロは全く意に介さない。
フライパンの横までやってきたシロは、サファイアとアンバーのオッドアイで、ジューッと焼かれている『大豆ミートのパティ』をジッと見つめた。
そして、ふんと鼻を鳴らすと。
フラットで熱くならないIHヒーターの操作パネルに向かって、自らの純白の肉球をポンッと軽く押し当てたのだ。
――ピカァァァァァァァァァッ!!!!
「うおっ!?」
「きゃああっ!?」
シロの肉球が触れた瞬間、フライパンの中のパティから、強烈な『七色の光』が炸裂した。
それは、ゲーミングPCのイルミネーションを彷彿とさせる、激しいRGB発光。
同時に、フライパンの中から、それまでとは全く違う『とんでもない匂い』が爆発的に立ち昇った。
「な、なんだこの匂い……!? 最高級の鉄板焼き屋でしか嗅いだことのないような、甘くて芳醇な……和牛の脂の香りだと!?」
俺はトングを握りしめたまま、完全に硬直した。
光が収まったフライパンの中には、先ほどまでのパサパサした大豆ミートの姿はなかった。
表面はカリッと香ばしく焼き上がり、その中心からは、溢れんばかりの透明な肉汁(?)がジュワジュワと湧き出している。
さらに、パティ自体がまるで内側からネオンサインのように、ぼんやりと『七色(ゲーミングカラー)』に発光し続けていた。
「お、お兄さん……! 大豆ミートが……光り輝くゲーミングお肉になっちゃいました!!」
小春ちゃんがパニックを起こして絶叫する。
配信のチャット欄は、完全に人類の理解を超えた現象に、狂乱の弾幕で埋め尽くされた。
『はああああああああああ!?!?』
『ゲーミング・ソイミートwwwww』
『光った!? 肉が七色に光ってるぞ!!』
『シロ様、ついに大豆のDNAをA5ランク和牛に書き換えたww』
『匂いまで変わってるって主が言ってるぞww』
『植物性タンパク質(神聖力100%)』
『(ミシュラン三ツ星シェフからの$500MeTubeギフト)=”Master! What is that light!? Is it a new molecular gastronomy technique!?“(主よ! その光は何だ!? 分子ガストロノミーの新たな技術か!?)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”I will fund a restaurant chain with that gaming burger! Name your price!“(そのゲーミングバーガーでレストランチェーンに出資する! 値段を言え!)』
世界中が奇跡のハンバーガーに熱狂する中。
シロは「美味しくしてあげたわよ」とばかりに前足をペロペロと舐め、再びこたつへと戻っていった。
俺は震える手で、発光し続けるパティを玄米バンズに挟み、レタスとトマトを乗せて『奇跡の健康(?)ゲーミングバーガー』を完成させた。
「……こ、小春ちゃん。とりあえず、食べてみよう。毒ではない……はずだ」
「は、はい……!」
俺たちは、七色に光るハンバーガーを両手で持ち、恐る恐る口へと運んだ。
サクッ、ジュワァァァァァ……ッ!!
「……………………!!」
噛み締めた瞬間、俺の脳のシナプスが、未知の快楽物質によって完全に焼き切れた。
なんだこれは。
大豆の風味など1ミリもない。
とろけるような極上の食感。口いっぱいに広がる、A5ランク和牛すらも凌駕する圧倒的な旨味と、暴力的なまでに甘い肉汁(マイナスイオン)。
それでいて、玄米の香ばしさと相まって胃にもたれるような重さは全くなく、まるで清らかな湧き水を飲んでいるかのように、スッと身体に吸収されていく。
超絶ジャンクな味わいでありながら、細胞が浄化されていくような完璧なヘルシー食。
「お、おいひぃ……! お兄はん、これ、今まで食べたどんなお肉よりも美味しいです……! ほっぺたが落ちちゃいますぅ……!」
小春ちゃんが、目を白黒させながら、あまりの美味しさにポロポロと涙をこぼし始めた。
『小春ちゃんが泣くレベルの美味さww』
『大豆が和牛を超えた瞬間である』
『シロ様(最高の調味料)』
『俺もそのゲーミングバーガー食いてええええ!!』
リスナーたちが羨望のコメントを投下し続ける中、俺はカメラに向かって、ギリギリの理性を保ちながら語りかけた。
「……皆さま、落ち着いてください。これは魔法でもなんでもありません」
『出たァァァァァ!!!』
『主の限界言い訳タイム・ゲーミングバーガー編ww』
『さあ、この発光する肉をどう論破する気だww』
『限界集落おじさん、ついに食品科学に喧嘩を売る』
俺は、完璧なポーカーフェイスで真顔を作り、静かに言い放った。
「大豆に含まれるアミノ酸と糖が加熱によって結合する『メイラード反応』が、シロの静電気によって極限まで加速されたのです。パティが七色に光っているのは、バンズの表面に塗られた油膜が、スマートフォンの画面の光を反射して『構造色(シャボン玉と同じ原理)』を生み出しているだけです。ええ、ただの光の屈折と生化学的な旨味成分の相乗効果ですね」
「あるわけないじゃないですかぁぁぁ!!!」
小春ちゃんが、口の周りに肉汁(?)をつけながら絶叫した。
「光の屈折で、お肉の中からネオンみたいに七色に発光するわけないでしょ!! しかも大豆がA5ランク和牛の味になるなんて、メイラード反応をどんだけ拡大解釈してるんですか!! どう見たってシロちゃんの神聖なオーラが注入されたんでしょうが!!」
『小春ちゃんの的確すぎるツッコミww』
『メイラード反応(神聖力注入)』
『構造色で肉が発光は草』
『適応力バグおじさん、光の屈折で全てを誤魔化そうとする』
『言い訳が雑すぎて腹痛いww』
俺の理不尽極まりない現実逃避と、小春ちゃんの鋭い正論パンチに、250万人の視聴者たちは大爆笑の渦に包まれた。
『コンッ!』
『キュゥ!』
足元では、和牛の匂いに釣られたキツネ兄弟のコン吉とコン次郎が、「僕たちにもちょうだい!」と必死に背伸びをしている。
「……まあ、理由はどうあれ。これで胃腸の負担なく、最高のハンバーガーが食えるってことだ。毒になるネギ類は一切入ってないから、お前らにも少しだけ分けてやる」
俺は苦笑いしながら、光り輝くパティの端っこをちぎって、キツネたちに与えた。
外はマイナス気温の厳しい冬だが、この限界集落の古民家には、大自然の恵みと神獣の奇跡が融合した、世界で一番美味しくてバグった食卓がある。
俺たちの堕落しきったスローライフは、七色に輝く奇跡のハンバーガーの味と共に、今日も最高にヘルシーに、そしてカオスに満ちていくのだった。
コメント
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はっっっっっ!!!大豆ミートがシロの肉球ひとつでゲーミングA5和牛に早変わり!?!?😭💕✨ 「メイラード反応と静電気で光ってるだけ」って言い張る主人公の屁理屈と、小春ちゃんの絶叫ツッコミが完璧すぎて腹筋崩壊したww 美味しさに泣く小春ちゃん、それに釣られて寄ってくるキツネ兄弟…このカオスな食卓、ずっと見てたい!!今日も最高にヘルシーでバグってて笑った〜🌸
ゆうき あきや
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#心理描写重視