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🫧第22章:魔法少年の音
🌙 音の自覚
放課後の音楽室。
律は鍵盤の前に座っていた。
指先はまだ音を鳴らしていない。
けれど、彼の中ではすでに“音”が始まっていた。
昨日、聖名が言った言葉が、律の胸に残っていた。
「聴かせない音が、一番届いたの」
その瞬間、律は気づいた。
自分の音は、ただの演奏じゃない。
空気を揺らし、誰かの心に触れる力がある。
「僕の音は、魔法なんだ」
彼は魔法使いじゃない。
呪文も杖も持っていない。
でも、音を鳴らすだけで、誰かの感情に触れられる。
それが律の魔法。
それが、彼が“魔法少年”と呼ばれる理由。
🫧 泡日記の記録
その夜、聖名は泡日記を開いた。
ページの余白に、律の音が静かに残っていた。
彼女はペンを取り、迷いなく書いた。
「律は魔法少年だ。
彼の音は、私の世界を少しだけ優しくした」
その言葉は、泡図書館の奥で分類されることなく、
“記録されない記録”として、静かに光っていた。
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