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#狂愛
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「二人目の候補……」
俺はその言葉を何度も頭の中で繰り返した。
一人目。
二人目。
まるで、俺が何かの順番に組み込まれているみたいだった。
「悠真」
美咲の声で我に返る。
「その紙、見せて」
俺は紙を渡す。
美咲は何度も読み返した。
「候補って書いてある」
「それだけじゃない」
「何が?」
俺は男のポケットから落ちたスマホを見る。
画面はまだ消えていない。
そこに表示されていた写真。
若い頃の父さん。
そして、その隣に立つ男。
「この人」
俺は写真を指差した。
「この人が、父さんと一緒にいた」
「でも、さっきの男は『昔一緒に仕事をしていた』って言ってた」
「じゃあ、何の仕事?」
俺はスマホを操作する。
写真の詳細情報を確認する。
撮影日時。
**2009年11月14日**
場所。
**蒼葉システム204号室**
「2009年……」
美咲がつぶやく。
「17年前?」
俺はうなずく。
その時。
男が小さくうめいた。
「……う」
「大丈夫ですか?」
美咲が駆け寄る。
男がゆっくり目を開ける。
「……逃げろ」
「え?」
「ここにいるな」
男の声は弱い。
「すぐに来る」
「誰が?」
俺が聞く。
男は答えなかった。
ただ、俺の顔を見て。
「お前は……」
「父親に似てるな」
その瞬間。
遠くからサイレンが聞こえた。
「警察?」
美咲が振り返る。
でも。
俺は違和感を覚えた。
サイレンの音が近づいてくる。
なのに。
赤色灯が見えない。
「これ……」
俺が言った瞬間。
路地の奥から黒い車が現れた。
パトカーじゃない。
普通の黒いワゴン車。
「走って!」
美咲が叫ぶ。
俺たちは男を置いて走り出す。
「待って!」
男の声が聞こえた。
振り返る。
男がポケットから何かを投げた。
小さなUSBメモリ。
俺は反射的に受け取った。
その瞬間。
ワゴン車のドアが開いた。
複数の人間が降りてくる。
「行け!」
俺たちは走った。
後ろから怒鳴り声。
「神谷悠真!」
俺の名前。
まただ。
どうして。
どうして俺の名前を知っている。
俺たちは路地を抜け、駅前へ出た。
人混みに紛れる。
しばらく走ってから、ようやく足を止めた。
「……USB」
俺は手の中を見る。
「これが証拠?」
美咲が聞く。
「分からない」
俺たちは近くのホテルへ逃げ込んだ。
部屋に入り、パソコンを起動する。
USBを差し込む。
フォルダが一つ。
**2009**
開く。
動画ファイルが一つだけ。
再生する。
画面に映ったのは、古い事務所。
見覚えのある場所。
204号室。
そして。
そこにいたのは。
若い頃の父さん。
俺は息を止めた。
父さんが誰かと話している。
「このままじゃダメだ」
「もう人を巻き込むな」
画面の外から男の声。
「だったら、あなたがやればいい」
「何を?」
「あなたの息子を使えばいい」
俺の心臓が跳ねる。
画面の中の父さんが叫ぶ。
「ふざけるな!」
男が笑う。
「でも、もう候補に入っている」
「神谷悠真」
俺は椅子から立ち上がった。
「……俺?」
画面の中。
父さんが震えている。
そして。
誰かが書類を机に置いた。
そこには。
子供の頃の俺の写真。
写真の下に書かれている。
**第一候補**
俺は息ができなくなった。
「……嘘だろ」
美咲が何も言わずに画面を見る。
動画は続く。
父さんが写真を握りしめる。
「この子には何もするな」
「俺が止める」
すると。
画面の外から声がする。
「あなたが止められると思いますか?」
映像が乱れる。
最後に。
一枚の文字だけが表示された。
**第一候補 神谷悠真**
**第二候補 ???**
俺は画面を見つめる。
「……待て」
「俺が第一候補?」
じゃあ。
今まで俺が「二人目の候補」だと思っていたのは――
誰なんだ?
その瞬間。
動画の最後に、新しい映像が再生された。
そこに映っていたのは。
現在の俺。
そして。
その隣にいる美咲。
俺は言葉を失った。
画面の下には。
新しい文字が表示される。
**第二候補 美咲**
(第四十三話へ続く)
コメント
13件
おお、第42話読んだわ…最後の「第二候補 美咲」で持ってかれたわ。悠真がずっと「二人目の候補」って気にしてたのが、まさか自分が第一で、美咲が第二だったとは。伏線の張り方がえぐいな。しかも2009年の映像で父親が必死に止めようとしてたのも切なくて、親子の因縁が一気に重くなった感じ。続きが気になりすぎて今夜眠れそうにないわ🔥