コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ラクシル様に屋敷に招待されることになった後僕は一人考え事をしていた。
想定外だ。僕が悪いとはいえ、まさかあんな伏兵がいるなんて。
どうすればいいんだ。
「ンーーアレン」
父上と母上に迷惑をかけてしまった。今後どう挽回すればよいのだろう。
解決策が思いつかない。
「ちょっとアレン。大丈夫?」
「あ……す、すいません。なんでしょうか?」
「なんでしょうかって……まさか陛下の挨拶聞いていなかったのかい?」
「え?」
父上に声をかけられる気が付かなかった。僕としたことが、ボーッとしてしまっていた。
気がつけば陛下の挨拶が終わっていた。
父上はそんな僕を見て心配してなのか声をかけてきた。
「アレン、今は切り替えよう。さっきの件は気にしなくていいよ。ラクシル様より後日ご招待されたからね。その時に謝罪をすればいいさ。今は陛下にご挨拶に行かなければね」
「……はい」
ああ……そうだ。僕は何をしていたんだ。今はお披露目会の途中。切り替えをしなければ。
気を抜いていたからミスをしてしまった。
「すぅ…はぁ…もう大丈夫です」
「わかったよ」
「そんなに気を張らなくていいのよ。入場した時みたいに自然体にね」
父上と母上はこう言ってくれたけど、やはり、気を引き締めていこう。
僕は父上たちと国王陛下の元へ向かった。
階段をのぼり、陛下の座る椅子の前に並ぶ。
挨拶の順番は爵位の高い順になる。僕は今回の参加者の中では上から数えた方が早い。
なので、順番はすぐに回ってきた。
父上に倣い陛下の前に膝をついて頭を下げる。
陛下は年齢は40歳くらいだろう。黄色の口と顎の髭を生やして威厳があった。
「陛下、本日はお招きいただきありがとございます。こちらにおりますは、息子のアレンです」
「アレン=ユベールでございます。本日はお招きいただきありがとうございます」
「今日は遠いところよく来てくれた。そう堅苦しくしなくて良い。本日は祝いの場だ、楽しんでいくが良い」
「お心遣い感謝致します」
挨拶は父上の真似をする。
これが最良だ。このまま気を抜かずに乗り切りたい。
だが、これから少し陛下と会話をする。
正直もう挨拶終わったし、早くおさらばしたい。
だが、僕は前の子供の会話を聞いていたが、陛下は緊張している子供達を気にかけていた。
人によっては冗談を言ってその場を和ませてくれている。
だから、僕も同じように話を振られるだろう。
「それにしてもアレン、其方は優秀なようだな。他の子女は緊張しているものが多いと言うのに」
「陛下、私も至らぬ点が多々あります」
「謙遜しなくても良いぞ」
やはりというべきか……だけどここで肯定するわけにはいかず、当たり障りのない回答をした。
その後も陛下との話は続く。
「それにしてもユベール夫人によう似ておる。綺麗に着飾り女子おなごと言われれば信じてしまうかものぉ。ユベール夫人もそう思わんか?」
「私もそう思いますわ」
「あの、お戯れはおやめください」
陛下は母上に話かけたのだが……お願いします陛下、その笑えない話題はやめてください。母上が本気になったらどうするつもりですか。昔、ドレス着せようとしてたんですよ。
母上も同意しないでくださいよ。
そんな僕の心の叫びは誰に届くわけもなく……だが、幸いなことに、話はこれで終わってくれた。
「ま、冗談はこれくらいにしておくかの。次の者が待っておるし。アレン、これからも励むが良い」
「はい。精進したいと思います」
ああ……やっと終わった。
陛下は緊張をほぐすために話しかけているらしい。確かに国のトップと話せば貴族の子女との会話は楽に感じるだろう。
よく考えている。
でも、僕からしたらいい迷惑だ。
実際僕は自分の容姿を気に入っている。美少年なことは認めるけどね。
そう思いつつ、挨拶が終わり陛下の元を去った。
階段を降りて少し歩くと母上が話しかけてきた。
「アレン、お疲れ様。よく頑張ったわね」
母上が僕の頭を撫でる。
いや、別に真似をしただけなのだが……まぁ、気にしなくていいだろう。
今は抵抗せずに撫でられる。
うん……母上のなでなで気持ちいい。
堪能していると父上が話しかけてきた。
「陛下相手に上出来だったな。後は終わりまで自由にしていい。僕とユリアンは挨拶に向かうから、子供同士で仲良くしていなさい。いいかい、これ以上は問題を起こさないようにね」
「はい」
母上に撫でられ甘えている姿を見て、父上からは問題を起こさないように、の部分を強調されて言われたのだった。
いや、わかってます。
もう面倒ごとはごめんです。
「ねぇアレン」
「なんですか母上」
父上たちと別れる前、母上が話しかけてきた。
なんだろう?
「今度私と服を買いに行きましょう」
「……」
突然の母上からの誘い。
陛下との話からまさか本気になったわけではありませんよね?
「……何か企んでます?」
「違うわよ」
母上は僕がジト目で見続けるとすぐに否定して、そのまま話を続ける。
「今まで一緒に買い物に行ったことないし、アレンって装飾品あまり持ってないじゃない?今後お茶会とパーティに出席することになるだろうし、いい機会だと思って」
「……そういうことでしたら。わかりました」
……怪しい。
まぁ、装飾品は欲しいと思っていたし、こういうのは母上の方が詳しそうだ。
親子の時間を作るのも大切だし……しょうがない。
警戒してれば大丈だろう。
今度一緒に行くか。
ソブール公爵家の一件が落ち着いたら。